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第11回科学技術情報整備審議会議事録

日時:
令和元年9月26日(木)午後2時から午後4時まで
場所:
国立国会図書館東京本館 総務課第一会議室
出席者:
科学技術情報整備審議会委員・専門委員 10名(欠席4名)
西尾章治郎委員長、竹内比呂也委員長代理、喜連川優委員、佐藤義則委員、戸山芳昭委員、濵口道成委員、藤垣裕子委員、村山泰啓委員、生貝直人専門委員、北本朝展専門委員
(石田徹委員、ロバート キャンベル委員、児玉敏雄委員、増子宏委員は欠席。)
館側出席者 16名
館長、副館長、(幹事)総務部長、調査及び立法考査局長、収集書誌部長、利用者サービス部長、電子情報部長、関西館長、国際子ども図書館長、(陪席)総務部企画課長、総務部会計課長、収集書誌部主任司書、利用者サービス部副部長、利用者サービス部サービス企画課長、(事務局)利用者サービス部科学技術・経済課長、電子情報部副部長電子情報企画課長事務取扱
会議次第:
  1. 開会
    • 新委員及び専門委員紹介
    • 新幹事紹介
  2. 国立国会図書館長挨拶
  3. 報告
    • (1) 第四期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画の進捗状況について
    • (2) ジャパンサーチ、次世代デジタルライブラリーの状況について
  4. 議題
    • (1) 基本方針検討部会の設置について
  5. 閉会
配付資料:
(参考資料)
議事録:
1. 開会
西尾委員長:
ただ今から第11回科学技術情報整備審議会を開催します。
委員の皆様にはお忙しいところ、当審議会に御出席くださいましてありがとうございます。
本日は、12名の委員中7名の委員に御出席いただいていますので、定足数は満たされています。初めに、事務局から委員の交代等の報告とお知らせがあります。
上保科学技術・経済課長:
事務局から委員の交代、本日の出席者等について報告します。名簿を資料1として配付していますので、御覧ください。
文部科学省大臣官房の増子宏審議官が新たに委員に御就任くださいました。本日は、石田徹委員、児玉敏雄委員、ロバート キャンベル委員、増子宏委員が御欠席です。喜連川優委員は遅れて御出席の予定です。また、この度、東洋大学経済学部准教授の生貝直人先生と国立情報学研究所准教授の北本朝展先生に専門委員をお願いし、本日も御出席いただいています。
続きまして、委員の先生方の活動を補佐する幹事を御紹介します。幹事には国立国会図書館(以下「NDL」)の部局長等が任命されています。NDL内の人事異動に伴い、幹事に異動がありましたので御報告します。山田調査及び立法考査局長と佐藤電子情報部長が前回の審議会以降に新たに幹事に任命されました。
本日は、幹事のほかに、羽入館長、坂田副館長、審議会事務局の職員も同席しています。
2. 国立国会図書館長挨拶
西尾委員長:
開会にあたり、羽入館長から挨拶があります。
羽入館長:
皆様こんにちは。本日は御多用中おいでくださいまして誠にありがとうございます。また、この度、2名の先生方に専門委員として加わっていただきました。どうぞよろしくお願い申し上げます。
本日は現在進行中の第四期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画の進捗状況を御説明させていただきます。同計画では「深化型知識インフラ」の整備をうたっていますが、その一端となる事業や、現在実験中のものについて御紹介します。
既に御承知のように、私どもは皆様からいただいた提言を基にして基本計画を策定しています。今年は5か年計画である第四期計画の4年目ですので、今年度から新たな基本計画に向けた提言を策定していただきたいと思っています。学術情報を取り巻く状況は1年先が予測できないほど著しい変化をしていますので、先生方から専門的な知見を御教示いただいて次の基本計画に反映させたいと考えています。どうぞよろしくお願いします。
3. 報告
西尾委員長:
会議次第の3.報告に移ります。事務局が2点の報告をした後に、報告への質問を受け付けます。では、事務局から報告をお願いします。
(1) 第四期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画の進捗状況について
上保科学技術・経済課長:
(資料2に基づき説明)
(2) ジャパンサーチ、次世代デジタルライブラリーの状況について
木藤電子情報部副部長:
(資料3に基づき説明)
西尾委員長:
計画されていたことが着実に実行されているように私は思います。
議題に移る前にただ今の報告に対する質疑応答を行いたいと思いますが、いかがですか。
竹内委員長代理:
2点質問があります。
1点目はデジタル化に関することです。資料2のスライド9に雑誌のデジタル化が進んでいるとありましたが、スライド10を見ると雑誌はNDL館内限定提供資料の割合がかなり高いようです。これを図書館送信対象資料にできない理由はどこにあるのでしょうか。
片山利用者サービス部長:
商業出版社が出している雑誌については図書館送信の対象外とする旨関係者と協議してスタートしています。その結果、図書と比べて図書館送信できないものが多くなっています。
竹内委員長代理:
分かりました。では今回デジタル化されたという学協会誌はほぼ図書館送信対象になっているという理解で良いでしょうか。
木藤電子情報部副部長:
学協会誌は基本的に非商用誌ですので、図書館送信対象となる想定です。
竹内委員長代理:
2点目はジャパンサーチについてです。画像などのデジタルアーカイブを持っているところのものをじかに収集するのではなくて、つなぎ役となるアーカイブ機関を介して収集するという話でした。大学の場合は、かなりの量のデジタルアーカイブがあると思いますが、各大学がそれぞればらばらに動いていて、それらのつなぎ役はほとんど存在していないのではないかと懸念しています。そういった場合については、どのような方策で取り組んでいくのでしょうか。
木藤電子情報部副部長:
原則はつなぎ役を介してということになっていますが、確かにつなぎ役が存在しない分野もあります。その場合には個別に御相談をいただいてから、デジタルアーカイブジャパン推進委員会の実務者検討委員会で具体的に「こことは連携できる」あるいは「つなぎ役がいないと無理」というような判断をしています。実際に大学や博物館などから御相談をいただいていまして、調整を進めています。なるべく幅広くつなげたいと思っています。そこまで原理原則主義ではないということです。
戸山委員:
できるだけ速いデジタル化が求められていると思うのですが、報告されたスピードは予算の範囲内で行った結果のスピードなのでしょうか、それとも何かボトルネックになっているものがあるのでしょうか。
佐藤電子情報部長:
平成21年度辺りには大規模デジタル化予算として100億円以上が補正予算で計上されましたが、そういったことはしばらく見込めそうにないので、予算の範囲内で行わざるを得ません。それもあって、限られた予算の中でいかに低いコストで行うかという検討を進めていまして、まだ試行段階ですがデジタル化作業の内製化にも取り組んでいます。
羽入館長:
今までは資料の性質を問わず比較的一律にデジタル化していたのですが、現在は作業を加速できる資料とそうでないものを分け、また同時に内製できるものは内製するという検討をしています。昨年検証して今着手しつつありますが、実際のところ一番のネックはやはり予算の確保です。
戸山委員:
もう1点、資料2のスライド10にあるように博士論文や学術論文のデジタル化も大事なのでどんどん進めてほしいのですが、対象となるのは飽くまでペーパーになったものだけなのか、そのもとになったデータも含めるのか。今後の方針としてはそちらに向かいたいのでしょうか。
佐藤電子情報部長:
博士論文については、収集対象を成果物に限定しています。もととなった研究データを当館で扱うのは難しいと考えています。なお、数年前、学位規則が改正されたことに伴い、博士論文の電子データが当館に送付されることになり、それについては収集しています。また、1990年より前に収集した紙媒体の博士論文のデジタル化も進めています。
北本専門委員:
次世代デジタルライブラリーについてですが、AIを活用したシステムを作る際には、外部のアイディアを集めることも大事だと思います。資料3のスライド17に書かれているハッカソンに私も参加し、多くのアイディアが活発に提案されているのを見ました。また、人文学オープンデータ共同利用センターも、実は「くずし字認識:千年に及ぶ日本文化への扉を開く」というKaggleコンペティションを開催しています。いろいろな国、例えばロシアやイギリスの人々が参加し、くずし字認識の課題にトライしています。才能ある人が世界のどこにいるかは分からないというのが今の状況ですので、人々の知恵を集める新しい開発のやり方を是非取り入れてほしいと思います。
西尾委員長:
オープンな場で外からいろいろな意見を取り入れるのは今後の発展のためにも重要なやり方なので、是非参考にしてください。
村山委員:
資料3のスライド4によると、書籍等分野についてはNDLがつなぎ役を担うことになっていますが、文化財、メディア芸術、放送番組、地域アーカイブといったほかの分野、これが全部なのかほかにもあるのかは分かりませんが、それぞれの分野のつなぎ役についてはもう見込みがあるのでしょうか、それとも体制作りは今後の課題なのでしょうか。
木藤電子情報部副部長:
同資料のスライド6に、現在連携しているつなぎ役を掲載しています。今のところは国の機関に近いところと連携していますが、つなぎ役は分野ごとにそれぞれ一つと決まっていません。例えば国立の美術館では国立美術館同士のデータしか持っていなかったりしますので、更に他の美術館にも拡大する可能性はあります。また、ここに記載している分野が全てというわけではありません。分野、地域のつなぎ役と称していますが、地域のつなぎ役はまだ具体的には出てきておらず、その辺りが今後の課題です。つなぎ役がない場合は、柔軟に連携して拡大することになると思います。
村山委員:
同スライドの表に「データ提供機関」と書いてあるのは、国立公文書館や国立文化財機構などのデータを持っているところが提供するということと、そういったところがつなぎ役になるということの両方を意味していて、そういう機関を集めてやるものだと理解して良いですか。
木藤電子情報部副部長:
そのとおりです。例えば人文学のつなぎ役である人間文化研究機構の場合は、その下にあるたくさんの研究所でたくさんのデータベースを構築していまして、つなぎ役としては1機関ですが、たくさんのデータベースがつながっていることになります。他方で文化庁の文化遺産オンラインの場合は、データベースとしては一つですが文化財を所有しているところは様々で、それらを取りまとめて総合的なデータベースを作っている機関と連携している形です。
佐藤委員:
資料2のスライド7に書かれているオンライン資料制度収集について、現在は無償かつDRM(技術的制限手段)がないものを対象としていて、有償かつDRMがないものについて実証実験を行っているとのことですが、図中のA~Dそれぞれの比率や件数はどう把握しているのでしょうか。DRMの有無にかかわらず、文化保存として、コンテンツを将来にわたって引き継いでいくために重要だと思います。
山地収集書誌部長:
制度収集しているグループA(無償かつDRM無し)が100万点を超えたという話は先ほどの説明にあったとおりです。グループB~Dについては確実に言えることがありません。ただ、電子書籍販売サイトには100万点、200万点と書いているところもあります。今後制度収集を進めるにはスケールの問題が当然ありますが、実証実験で確認できているのは大手出版社の一部の資料で4,000点、5,000点というスケールです。収集される電子資料の総体を把握していく努力は今後も続けたいと思っています。
濵口委員:
最近天変地異が激しくなっています。データを安全に管理、保存するためのリスク管理についてどう考えていますか。
佐藤電子情報部長:
紙資料については官公庁資料を中心にできるだけ複数納本していただいています。また、デジタル化した資料の原本は関西館に保管しておき、デジタルデータを提供するということをしています。そのデジタルデータについては、データセンターで、オリジナルデータを保存用とし、それとは別の提供用と合わせて2種類を保管しています。
本吉関西館長:
紙資料については、2002年の関西館開館時に作った書庫が一杯になるという状況ですので、現在新しい書庫棟を建設中です。来年2月に完成予定で、来年度から東西間の資料移送を進めていきます。電子データについてもコストの問題はありますが一定の対応はしています。
西尾委員長:
紙資料とデジタルデータの両方が二重に保存されていると理解してよいですか。
佐藤電子情報部長:
そうなるよう努力しているところです。特に紙資料のデジタル化についてはまだまだ部分的ですが、努力していきたいと思っています。
西尾委員長:
リスク対応として蓄積されたものが失われないよう、システムとして冗長化しておくことが重要です。今後更に強化してください。
藤垣委員:
ジャパンサーチについてです。NDLが国会会議録を扱っている一方で、各省庁にも各種の委員会の議事録があります。各省庁の委員会議事録は各省庁のサイトに行けば見られるわけですが、国会の議事録はジャパンサーチのアーカイブの対象になるのでしょうか。海外の研究者から見ると、例えば日本の科学技術政策を研究したいと思っても資料探索が結構大変です。ジャパンサーチは日本国内の政策形成に興味を持つ海外の人たちにとっても良いアーカイブになると思うのです。
西尾委員長:
NDLのミッションとして重要だと思いますが、今できるのでしょうか。できないとしたら今後はどうでしょうか。
佐藤電子情報部長:
ジャパンサーチは国の事業として行っていまして、正に行政機関の文書も含め統合的に検索できるようなサービスの実現を目指しているものです。NDLができる分野についてはNDLが携わりますが、各府省の文書は国立公文書館が取りまとめ役となって、そこからメタデータを提供していただくという形が望ましいと考えています。
西尾委員長:
藤垣委員の御指摘は今後の良好な国際関係を築く上でも重要なので、是非進めてもらいたいと思います。
坂田副館長:
国会会議録は、衆議院、参議院、NDLの共同事業ですが、現在はジャパンサーチの検索対象には入っていません。今後検討させていただければと思います。
西尾委員長:
各委員から様々な意見がありましたが、現時点の進捗状況としては着実に進めているということで異論はないものと思います。ジャパンサーチについては素晴らしいものができつつあるが、正式版公開に向けて更に尽力してほしいと思います。実務者検討委員会ではNDLから意見は言えるのでしょうか、それともそこで決まったことに基づいてシステムを運用するだけなのでしょうか。
木藤電子情報部副部長:
いろいろ言わせていただいています。アーカイブ機関等との実際の連携窓口もやっています。そこからくみ上げた意見を実務者検討委員会へ伝えてもいます。
西尾委員長:
後は予算ですね。これだけのシステムであればもっと増えるべきだと切実に思います。
喜連川委員:
ジャパンサーチは知財本部の中でも議論されまして、そのとき少しだけ雰囲気を感じ取ることができたのですが、予算は本当に微々たるものです。コンテンツはそれぞれの機関が持っていて、ジャパンサーチはポータルということでした。ジャパンサーチから入ってコンテンツに至る流動と、Googleから入ってコンテンツに至る流動を考えると、リファラー(referer)を見ればその二つのどちらから来たかがコンテンツホルダーには分かるわけですから、目的関数ははっきりしている、つまりジャパンサーチからどれだけ来るかを目的関数にするのが良い動機付けになるように思います。そうすると、間口を広げるよりも、最初のうちはこれこそ日本だというものにフォーカスして、とにかく皆がジャパンサーチを使うような雰囲気に持っていく、最終的には「やっぱり日本のコンテンツならここだよね」と思ってもらえるようにすることが重要ではないでしょうか。そのためにNDLで戦略を持ってほしいと思います。
西尾委員長:
Googleではなくジャパンサーチを見てくれる人を増やすには、総花的にやっていたら大変なので、得意な領域を作ってから徐々に広げていくことで、Googleを超えるものを目指してもらいたいと思います。
4. 議題
西尾委員長:
続いて議題に移ります。
(1) 基本方針検討部会の設置について
西尾委員長:
ただ今、第四期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画に関する報告がありましたが、本審議会としましては、NDLが令和3年度以降に係る次期計画を策定するために提言を出すのが良いと考えています。その基本方針を検討し、素案を作成するものとして、基本方針検討部会を設置することについて委員の皆様にお諮りしたいというのが本議題の趣旨です。
この部会の設置について、まず事務局から説明してください。
上保科学技術・経済課長:
(資料4に基づき説明)
なお、部会については、科学技術情報整備審議会規則第4条で設置について規定されており、議事規則第6条により、委員長が審議会に諮って設置することとなっています。また、同条第2項及び第3項により、部会員及び部会長については委員長に御指名いただくことになっています。
西尾委員長:
部会の設置について議論したいと思います。
ただ今の事務局からの説明への質問も含め、御意見がある方は挙手をお願いします。
戸山委員:
物事を動かすには、場所も人もアイディアもお金も、全てセットで必要です。この5か年計画は、予算的なものもセットで策定する形になるのでしょうか。
西尾委員長:
科学技術基本計画等ではGDPの何%というように予算の目標額が記されますよね。
羽入館長:
恐らく、先に計画を立てて、その中で国にとっての必要性を説明して予算要求していくという形にならざるを得ないと思っています。先生方の御意見をいただいて計画を立てる以上は、やはり予算措置を前提にして考えていく必要があろうかと思います。
西尾委員長:
本審議会はNDLに提言をしていくわけですが、基本計画は最終的にどこでオーソライズされるのですか。
羽入館長:
いただいた御提言に沿って館内で議論し、決定していきます。
NDLの予算決定手順について簡単に御紹介しますと、私たちが作成した予算案を衆参両議院の議院運営委員会に御説明し、そして両議院の議長に御説明し、それが現実の予算になっていくという流れになります。その過程で財務省とも交渉します。
西尾委員長:
財務省との折衝はNDLと財務省がダイレクトに行うのですか。
羽入館長:
そうです。衆議院、参議院と足並みをそろえた上で、ダイレクトに行います。
西尾委員長:
今、知識集約社会ということが一つの大きな方向性として出てきています。ジャパンサーチもその重要なツールになってくると思いますので、NDLとしても強くアピールをして、財政などいろいろな面での風向きを良くしていくのが大事です。
村山委員:
部会の検討テーマについて質問します。「データ利活用社会」や「デジタルデータ」というように「データ」という言葉が使われていますが、これは基本的にはジャパンサーチが扱うテキストや書籍、画像などを指しているのですか。
佐藤電子情報部長:
ここにいう「データ」としては、書籍の本文であるテキストデータはもちろん入りますし、次世代デジタルライブラリーで研究しているような、例えば画像を白色化する前の元データと白色化したデータのようなデータなども含めて想定しています。
村山委員:
私は図書館学の人間ではないので、地球環境データのようなノンテキストの数値情報をどうするのかなという方にどうしても関心が向いてしまいます。まずはNDLの業務やジャパンサーチや次世代デジタルライブラリーのように技術やノウハウのあるところから発展させていくのでしょうが、少し抽象的なことを言いますと、論文の根拠データのようなものをどうするかというのが今後大きな問題になるだろうと思います。
海外の事例を紹介すると、私が所属するアメリカの地球科学、宇宙科学の学協会では、アメリカ国立科学財団(NSF)がファンドしてWileyやSpringer Natureなどの大手出版社を集めて、ノンテキストも含めた測定データの出版に関する業界の意思統一を図る団体が動いていました。私もその部会などに出席したのですが、ヨーロッパのグループも一緒に入って、米欧で意思統一を図っていました。彼らが出した声明を見ると、論文のPDFやデータをオブジェクトとして扱うとすると、学術情報というのはある単一のオブジェクトのことではなくて、オブジェクト同士がつながりあったネットワークのことなのだと、そのネットワークを大事にしないといけないということを明確に言っています。その意味でNDLによるメタデータの収集は非常に重要な取組です。テキスト、書籍、画像以外のオブジェクトに対するメタデータまでを視野に入れていくと、次世代の情報管理で日本が世界的なリーダーシップを取る可能性も出てくるのかなという感触を持っています。
佐藤電子情報部長:
当館でもメタデータの重要性は認識しています。デジタル化資料の全部にDOIを付与したのもそのためです。メタデータによって情報と情報を精緻にリンクするということには今後力を入れて取り組んでいきたいと考えています。
西尾委員長:
全体テーマも個別テーマも、国の第6期科学技術基本計画でもコアになる部分です。科学技術情報という観点では大いに関連していると思います。
喜連川委員:
先ほどの長期保存の話もそうですが、JSTにも関連するように思う一方で、NDLにとってやりやすいこととやりにくいことがあるという点にも配慮が必要な気がします。ここに書かれていることは日本の中で誰かがやらなければいけないことというのは誰も異論のないところでしょうが、科学技術情報というのがいわゆる科学技術を意味しているのであれば、我が国には原則としてそれぞれの分野に研究開発法人がありますので、そこが管理せざるを得ないということは厳然とした事実です。そうすると、NDLがやりやすく、かつその持ち味を出せる部分がどこなのかを考えていくことになるでしょう。そうした時に、サイエンスのエッジの部分では朝何時に何が出たかというのがarXivされて、それで世界の序列ができるので正直待っていられないのですが、一方で、先ほど藤垣委員が言われたような社会系のデータというのは、丁寧にゆっくり進めないといけないと思うのです。歴史的な文書などは、丁寧にひもといてそれをオープンにすることによって、いろいろな研究者が研究を進めることができます。我が国とアジアの隣国の間には今いろいろフリクションが出ていますが、あの手のものは本来ならば歴史学としてきちんと整理しておけばよかったのであって、相互理解を今やるのではなくて、毎年常に教育的な情報として共有すべきなのですね。そういうことこそがNDLらしいのではないでしょうか。ここに書かれている科学技術うんぬんというのはかなり一般的なので、その中のどこを狙うかという丁寧な議論をするのが良いのではないかと思います。
濵口委員:
一方で、科学技術基本法の改正に向けた議論が進んでいて、科学技術基本法、また同法に基づく科学技術基本計画の対象を限定していた「人文社会科学のみに係るものを除く」という規定を除く方針になっています。これまで以上に、人文社会科学と自然科学の融合的な研究をやる、また人文社科学の側から自然科学と人間・社会に関する問題の研究を進めるということです。それを考えるとNDLの取組には意義があると思います。一方で、自然科学の情報については、やはりどこかがハブ機能を持たないといけません。
西尾委員長:
NDLが全方位的にやっていくのは大変なので、JSTやNIIとうまく連携、分担しつつ、ある程度分野を絞ってもよいので、恒久的に価値の高いものとしてデータを残していくということが、日本の科学技術振興上重要だという御意見だと思います。その辺りも是非議論していただければということで、部会を設置してもよろしいでしょうか。
全員:
異議無し。
西尾委員長:
委員の皆様の賛同が得られましたので、基本方針検討部会を設置させていただくこととします。
続いて、部会員を指名させていただきたいと思います。図書館や学術情報の専門家である竹内委員と佐藤委員、各国の情報政策に詳しい生貝専門委員、それから、データ駆動型サイエンスを人文科学などの分野で展開されている北本専門委員にお願いしたいと思います。
また、部会長を竹内委員に是非お願いしたいと思います。
竹内委員長代理:
各委員から貴重な御意見をいただきました。大変重大な責任を負うことになるのだなと改めて考えているところです。是非委員の皆様や事務局の御協力をいただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
5. 閉会
西尾委員長:
予定していた議事は完了しました。皆様からは貴重な御意見をいろいろといただき、誠にありがとうございました。基本計画のための提言をしていくということで、本審議会にとって今年度から来年度にかけての大事なテーマになりますので、今後とも是非とも審議あるいは御意見を様々な形で頂戴できればと思います。何とぞよろしくお願いいたします。それでは事務局から連絡事項をお願いします。
(事務局から事務連絡)
(閉会)

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