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第12回科学技術情報整備審議会議事録
日時:
令和2年9月30日(木)午前10時から正午まで
場所:
ウェブ会議サービスによるオンライン開催
(サブ会場:国立国会図書館東京本館 人事課大会議室)
出席者:
科学技術情報整備審議会委員・専門委員 12名(欠席2名)
西尾章治郎委員長、竹内比呂也委員長代理、喜連川優委員、ロバート キャンベル委員、児玉敏雄委員、佐藤義則委員、塩崎正晴委員、戸山芳昭委員、藤垣裕子委員、村山泰啓委員、生貝直人専門委員、北本朝展専門委員
(石田徹委員、濵口道成委員は欠席。安嶌潔専門図書館協議会事務局長が陪席。)
館側出席者 16名
館長、副館長、(幹事)総務部長、調査及び立法考査局長、収集書誌部長、利用者サービス部長、電子情報部長、関西館長、国際子ども図書館長、(陪席)総務部副部長企画課長事務取扱、総務部副部長会計課長事務取扱、収集書誌部主任司書、利用者サービス部副部長、利用者サービス部サービス企画課長、(事務局)利用者サービス部科学技術・経済課長、電子情報部電子情報企画課長
会議次第:
開会
新委員紹介
国立国会図書館長挨拶
新幹事紹介
委員長選任
委員長代理指名
議題
(1) 第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画策定に向けての提言(素案)について
その他
閉会
配付資料:
(参考資料)
議事録:
1. 開会
遊佐利用者サービス部長:
ただ今から第12回科学技術情報整備審議会を開催します。
今回の会議は、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンラインでの開催としております。
この度は、委員に御就任くださり誠にありがとうございました。また、お忙しいところ、当審議会に御出席くださりありがとうございます。
本日の審議会ですが、現在、委員長が空席となっていますので、委員長選任までの間、暫定的に利用者サービス部長として幹事である私、遊佐が進行役を務めます。どうぞよろしくお願いします。
本日は、12名の委員中10名の委員に御出席いただいていますので、定足数は満たされています。また、基本方針検討部会の部会員である専門委員にも御出席いただいています。石田委員、濵口委員が御欠席です。御欠席の石田委員の代わりに、専門図書館協議会の安嶌潔事務局長に御陪席をいただいています。
次に、配布資料及びオンライン開催の注意事項について事務局から説明します。
上保科学技術・経済課長:
[配布資料について説明]委員の皆様方におかれましては、御発言を求められる場合は、マイクを一度オンにして、「〇〇(名前)ですが、よろしいですか。」等と、名前を挙げて一言お知らせください。その後、進行役から「〇〇委員、どうぞ」等と改めて指名しますので、それを受けて、御発言ください。なお、委員長選任後に御発言を求められる場合は、参加者一覧表示にある挙手ボタンを押してください。委員長から指名されましたら、マイクをオンにして御発言くださるようお願いします。
2. 新委員紹介
遊佐利用者サービス部長:
会議次第の「2. 新委員紹介」に移ります。委員名簿を資料1として用意していますので御覧ください。
文部科学省の塩崎正晴大臣官房審議官が新たに委員に御就任くださいました。塩崎委員、一言御挨拶をお願いします。
塩崎委員:
8月に文部科学省の大臣官房審議官に就任しました塩崎です。どうぞよろしくお願いします。
3. 国立国会図書館長挨拶
遊佐利用者サービス部長:
開会に当たり、吉永館長から挨拶があります。
吉永館長:
国立国会図書館長の吉永です。去る4月1日付けで、館長を拝命しました。よろしく御指導のほど、お願い申し上げます。
皆様方におかれましては、大変御多忙であるにもかかわらず、本審議会委員をお引き受けくださり、ありがとうございます。また、本日は、御多用中のところ、審議会に御出席を賜り、重ねて御礼申し上げます。
さて、国立国会図書館(以下「NDL」)の「第四期科学技術情報整備基本計画」に基づく取組は、今年度、その最終年度を迎えています。来年度からの第五期計画を策定するに当たり、本審議会から新たな御提言をいただくことをお願いし、昨年9月に開催した第11回審議会で、提言案を作成する基本方針検討部会を設置していただきました。これまで5回の部会が開催され、竹内委員、佐藤委員、北本専門委員、生貝専門委員には、大変な御尽力を頂いておりますこと、厚く御礼申し上げます。
本日の第12回審議会では、この部会で作成いただいた素案について、御審議いただき、本審議会としての最終的な御提言は、部会案を基礎にして審議の上、取りまとめをいただく予定と伺っております。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、科学技術政策に関する国の動きとして、第201回国会において、科学技術基本法が「科学技術・イノベーション基本法」に改正されました。改正法では、「イノベーション創出」の概念が導入され、対象として人文・社会科学のみに係るものも含まれることになりました。国の科学技術基本計画の次期計画につきましても、法改正に伴い、「科学技術・イノベーション基本計画」に名称が変更され、総合科学技術・イノベーション会議、またその下に設置された基本計画専門調査会において検討を進められていると伺っております。当館の現行の科学技術情報整備基本計画は、国の計画と直接関係づけられてはおりませんが、従来人文・社会科学分野の情報も含む幅広い分野の学術情報基盤整備を対象にしており、このような基盤、知識インフラがイノベーションを支えるものと位置付けて当館の諸活動に取り組んでいることから、国の計画と方向性を共有しているものと考えております。
また、今般、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、社会に様々な影響が生じました。当館におきましても、感染拡大防止のため、3月から6月まで臨時休館するなど、来館サービスや遠隔複写サービスを長期間休止せざるを得ず、開館再開した現在も入館者数を制限しており、利用者の皆様には多大な御迷惑をおかけしております。この間、研究者を始め多くの皆様からデジタル化やデジタル化資料公開の拡大について要望が寄せられ、本審議会の基本方針検討部会の御議論や、国の知的財産戦略に係る議論においても、同様の御意見を頂きました。コロナ禍を契機として社会全体のデジタル変革の加速化が求められる今日、国の知識基盤の一翼を担う当館は、社会の要請を受け、デジタルを活用したサービスの一層の促進に向けて、積極的に取り組んでいきたいと考えております。
このような状況下で、今後当館がどのように知識基盤整備を進めていくべきか、次の基本計画策定に向けた指針となる御提言を、委員の先生方から頂戴できれば幸いに存じます。本日は素案の御議論のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
4. 新幹事紹介
遊佐利用者サービス部長:
続きまして、委員の先生方の活動を補佐する幹事を紹介します。幹事には当館の部局長等が任命されています。
当館内の人事異動に伴い、幹事に異動がありました。山﨑調査及び立法考査局長、木藤関西館長、堀国際子ども図書館長、また私、遊佐が前回の審議会以降に新たに幹事に任命されました。
本日は、吉永館長、昨年就任しました田中副館長、幹事に加え、審議会事務局の職員も同席しております。どうぞよろしくお願いします。
5. 委員長選任
遊佐利用者サービス部長:
会議次第の「5 委員長選任」に移ります。お手元の参考資料1「科学技術情報整備審議会規則」第2条第5項の規定に従って、委員長を委員の皆様の互選により選任していただきたいと思います。どなたか御推薦いただけないでしょうか。
佐藤委員:
せん越ではございますが、御経験・御見識の観点から、引き続き西尾委員に御就任いただくのが最もふさわしいと考えますので、御推薦申し上げます。
遊佐利用者サービス部長:
ただ今、佐藤委員から西尾委員を委員長にと御推薦いただきました。委員の皆様の御異議がないようでしたら、西尾委員に委員長をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
全員:
異議なし
遊佐利用者サービス部長:
それでは、当審議会の委員長は、西尾委員にお願いしたいと思います。これ以降の議事は、西尾委員長に進めていただきます。西尾委員長よろしくお願いいたします。
西尾委員長:
ただ今、委員長の重責を賜りました大阪大学の西尾です。誠に微力ではございますが、科学技術情報整備に関しまして、少しでもお役に立てればと思います。吉永館長がお話くださったように、現在、非常に重要な時期に直面していると私自身も実感しています。特に「第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画」の策定も急がれております。そのような重要な時期に皆様方と様々な審議を重ねて、ぜひとも良い方向に持って行きたいと思っていますので、御協力・御支援のほどよろしくお願いします。
6. 委員長代理指名
西尾委員長:
それでは、会議次第の「6 委員長代理指名」に移ります。
審議会規則第2条第7項の規定に従い、委員長が不在の場合に委員長に代わって審議会を運営するために、竹内委員に委員長代理をお願いしたいと思います。御異議ありませんか。
全員:
異議なし
西尾委員長:
委員長代理は竹内委員に決定しました。竹内委員よろしくお願いします。
竹内委員長代理:
微力ではありますが全力を尽くしたいと思います。御支援のほどよろしくお願いします。
7. 議題(1)第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画策定に向けての提言(素案)について
西尾委員長:
続いて、会議次第の「7 議題(1)第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画策定に向けての提言(素案)について」に移ります。
来年度から5か年を対象とする「第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画」の策定に向け、前回、第11回審議会で設置された基本方針検討部会が、資料2のとおり議論を行い、提言素案を取りまとめました。部会長の竹内委員から御説明をお願いします。
竹内委員長代理:
基本方針検討部会は、お手元の資料2のとおり、これまで5回開催し、本日検討していただく提言の素案をまとめました。本日の御意見を踏まえ、更に検討した最終案を次回の審議会でお示しすることになっています。
お手元の資料3-2が提言素案の本文、資料3-1がその概要です。
提言のサブタイトルとして、「『人と機械が読む時代』の知識基盤の確立に向けて」という、いささかキャッチーなものを付けています。北本専門委員がセンター長を務めている人文学オープンデータ共同利用センター(以下「CODH」)が主催した日本文化とAIに関する2019年のシンポジウムでは、「AIがくずし字を読む時代がやってきた」というタイトルが付されています。本提言では、更にそれを進め、文字の自動認識を超えて、AIが大量のテキストや画像データを利用して新たな知見を生み出すことが当たり前になる時代を期待し、そのような状況においてこそ、NDLにおける知の蓄積が利活用され得るような、基盤の確立に向かうという施策の方向性を示しています。
そのような時代においては、人文・社会科学分野を含め、データ駆動型研究の推進等、研究や教育を含む社会のデジタル・シフトが生じているはずです。また、この部会検討中に起こった新型コロナウイルス感染症の流行によって、利用者の来館を前提とした図書館サービスの限界、非力さが露見しました。このような状況に対応すること、また課題を克服することが求められています。これはすなわち、新しい社会の有り様に対応した新しい図書館の在り方を確立することに他ならないと考えています。
このような状況を考慮し、かねて言われていたような図書館のデジタル化、又は電子図書館といった、蔵書を電子化して提供するという範ちゅうにとどまるのではなく、図書館が提供するサービスの全体をデジタル環境に対応したものに変革し、さらには教育の現場などで、デジタル化されたコンテンツの利活用を促進することも含めて考えていく必要があるという趣旨から、これまたキャッチーではありますが、デジタルトランスフォーメーション(以下「DX」)という言葉を使っています。
本提言の基本は、言うまでもなく、NDLの基本的役割における連続性を維持することにあります。しかしながら、その基本的役割を果たしていくためには、技術的、社会的環境の変化に対応していかねばなりません。それに対応していかに変化していくべきか、というのが本提言の基本ラインにあります。
資料3-1の最後のページにある図を御覧ください。この図の大きな枠組みとして、現行の「第四期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画」で整理された「利活用促進」と「恒久的保存」という二つの領域が示されています。他機関と分担・連携しながら、この二つの領域に取り組み、つなげていくという役割は、NDLにとって基本的なものであり、今後も変わらないものと考えています。この枠組みに対して、左の枠外にあるような、社会や技術の変化が起きていることを踏まえ、利活用促進や恒久的保存に係る取組をいかに変革していくべきか、言い換えれば、副題に示したように、「人」と「機械」が読者となる時代に、どのような利活用促進に係る取組が求められるか、を提言しています。
本提言は、本来は来年度からの5年間を対象としたものではありますが、技術革新のスピードも考慮し、また、今後の方向性を示すという観点から、中長期的な視点も含んでいます。過去の提言策定に取り組まれた委員の先生方と比べて、意欲だけは負けていないつもりではありますが、現部会長はいかにも非力であります。佐藤委員、生貝専門委員、北本専門委員の御尽力と事務局の支援を得て提言を取りまとめてまいりましたが、内容面においては、まだまだ不十分な点もあるかと思います。本日は委員の皆様の忌憚のない御意見を頂ければ幸いです。
では、詳細につきましては、事務局から説明します。よろしくお願いします。
上保科学技術・経済課長:
(特に資料3-1に基づき説明。)
西尾委員長:
ただ今の提言素案について、御議論をお願いしたいと思います。提言素案には、「第四期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画」の実施状況や国内外の動向等を踏まえた上で、来年度から始まる次の計画期間で、NDLが取り組むべき事項とその方針が記されています。
今年、科学技術基本法が改正され、科学技術・イノベーションの創出が目的に加わり、政府が検討を進める基本計画では、人文・社会科学のみに係るものも対象とすることとなります。また、新型コロナウイルス感染症に関する課題も山積しています。それらとの関係についても注目されているところかと思います。
提言素案について、御質問、御意見、御提案がありましたら、御発言願います。
喜連川委員:
この取りまとめは非常にきっちりと、要所要所が全部まとめられていると思います。先ほど基本方針検討部会を5回開催したと報告がありましたが、この5回は全て新型コロナウイルス感染症が流行した後なのかどうかまず伺いたい。
上保科学技術・経済課長:
基本方針検討部会の時系列については、資料2の1ページを御覧ください。「3 基本方針検討部会における検討経過」として、第1回から第5回までの開催日を記載しています。第3回までは対面で実施しましたが、第3回は新型コロナウイルス感染症が流行し始めていた頃ではないかと思います。第4回以降は延期の上、オンラインで開催しました。
喜連川委員:
国立情報学研究所でもそうですが、世の中で言われているのは、デジタル化の遅れです。「世界最先端IT国家創造宣言」を始め、デジタル化を頑張るというのはかなり前から言っていて、多くのドキュメントが出てきました。ところが実体のあるものとして具現化されたかというと、そうはなっていません。HER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)の利用も十分に進んでいません。COCOA(新型コロナウイルス接触確認アプリ)もいろいろな不具合が出てきています。東京23区でも、予算成立後、特別定額給付金が実際に振り込まれるまでに時間を要しました。政府はドキュメントをきれいにまとめることはできるようになってきていますが、具体的に何をすべきかという立案において、計画を作れば実現できるという思い込みがあったことが、非常に大きな痛手となっているというのが個人的な印象です。
長尾館長のときに100億円以上を掛けてデジタル化を進めたことが、データ駆動の源泉となっています。しかし、それが十分活用され、世の中に強いインパクトを与えるまでにはなっていないように思います。今回の提言は立派で、書かれていることは素晴らしくそのとおりですが、NDLの予算の中で一気に進められるかというと、厳しいのではないでしょうか。どう進めていくのかが重要です。ゴールしか言わずにやり方を言わないSDGsと同じように感じます。ゴールを言うのは誰でもできるというのが今のSDGsの状況です。どうやってやるのか言わないので、貧困格差など大きな問題が世界各国で出ていますが、国連でも助けることができない状況になっているのが現状です。ゴールをきっちりまとめていただき、とりわけ人文学をデータ駆動型にするというのは素晴らしいですが、どういうステップでやるのかということが重要です。昨日のNHK「クローズアップ現代」でNIIの山田誠二先生も出て取り上げられていましたが、人文・社会科学にAIを適用することはサプライジングではありません。今我々が考えることは、AIの限界をどう理解して次の一手を考えるかということです。通常の適用はやればできることが分かっているので、ありとあらゆるITの動きを見た上で、具体的なステップをもう少し精緻に考える必要があります。竹内委員のミッションがどこまでか分からないので失礼があるかもしれませんが、このゴールはパーフェクトだと思うので、もう一歩次の具体化のプロセスを進めていただくと良いと思います。
西尾委員長:
ありがとうございました。提言のカバーする範囲、具体的なステップなどについて、竹内委員からお話いただけるでしょうか。
竹内委員長代理:
有益な御意見ありがとうございます。私も言いっぱなしは無責任だと思っています。提言をどのように実現するのかは、資料4にあるように、提言を踏まえてNDLが「第五期国立国会図書館科学技術情報整備基本計画」を策定することになっています。提言の役割は、その方向性と特に留意すべき点を漏れなく挙げる、あるいはその中で優先順位を明確に示しておくことにあると思っています。喜連川委員から御発言があった具体化は、今後基本計画を策定する段階でNDLが検討するのではないでしょうか。
西尾委員長:
今の竹内委員の御発言のとおり、具体的なことは基本計画の中でより明確にされていくということでよろしいでしょうか。
佐藤電子情報部長:
提言を受けて当館の第五期の基本計画を策定することは間違いありません。喜連川委員が御指摘されたように、10年ほど前に100億円ほどの予算を計上して大規模なデジタル化を達成しましたが、その後の進展は見えづらい状況になっています。地道な成果としては、デジタル化した絶版等資料を図書館に送信するという事業が軌道に乗り、利用も増えています。しかし、まだ当館が所蔵している図書・雑誌の2割しかデジタル化が実現していないことは、我々としても忸怩たる思いです。今般、大規模なデジタル化を進めるために予算要求をしており、当館としてもデジタル化を進めたいと考えています。
西尾委員長:
審議会として取りまとめるものは基本計画策定に向けての提言となっています。喜連川委員が言われたことを十分に踏まえて、基本計画を策定していただくということを審議会からは要望することで進めていきたいと思います。具体的なステップとして、何を何時までに実行していくのかということについて明確にすることが重要です。記述されていること全てを網羅的に遂行するのは予算的にも難しいと思われますので、特に目玉として必ず実行することについては、基本計画の中で明確に記述していただくことを審議会から要請したいと思います。
村山委員:
素案の内容について、大変よくまとまっていると思います。肝要な点を捉えて議論がされ、方向性を示している点に全く異論はありません。ところで資料中の「機械」というのはおそらくmachine readableという英語を訳していると思います。「機械」というのが良いのか「計算機」というのが良いのか分かりませんが、人ではなく、自動処理によってNDLに保存された知が利活用される筋道をつけ、利活用に向けた予算要求等も円滑に進むことを祈っています。
社会のDXやデータ駆動型研究というような構造的な変化、方法論の変化、MLA(博物館・図書館・文書館)連携で文化資源全体が活用されることが期待されますが、デジタル化されたのは所蔵和図書等の20%という話も先ほどありました。揚げ足を取るつもりではありませんが、一般社会の各企業や学校教育等を拝見しても、社会がDXできたという言い方は強すぎないでしょうか。また、ニュアンスとして、資料3-1の「Ⅱ1(1)データ駆動型研究の進展」には「学術情報全般の流通・コミュニケーションの構造変化を引き起こし、『データ駆動型研究』の進展をもたらした」とありますが、学術の全領域においてデータ駆動型研究が進んでいるという印象を読者に与えた方が得策なのか、今はプロトタイプ的な事例としてこの成功事例があると打ち出して、今後ますます投資や活動が必要なのだと言った方が得策なのか、といった点を検討いただいてはいかがでしょうか。日本学術会議からオープンサイエンスに関する提言が出ていますが、学術領域全般においてもDXを前提に議論する人もいれば、どうアプローチすればよいのか、あるいは学協会では、それは本当に必要なのか、というところから議論が必要な研究者もいて、かなり凸凹している状況もあるようです。全体の底上げに向けて、NDLという我が国の中心的な知の資源管理の拠点が動くのは非常に重要です。その点についても御検討いただければと感じました。
竹内委員長代理:
大変重要な視点を御指摘いただきました。DXはキャッチーな言葉ですが、どう使っていくかは非常に難しいです。特に社会へのアピールのようなことを考えたときには、意図的にこういった言葉を並べることで注目してもらうこともあるかと思います。一方でそれが厳密な議論につながるかどうかは非常に難しいところがあります。提言本文ですと、資料3-2の2ページの「Ⅱ1(1)データ駆動型研究の進展」の第1段落にかかる部分について、次回の部会で検討したいと思います。
西尾委員長:
せっかくの機会ですので、皆様に3分間を目安にコメントをいただきたいと思います。まずはロバート キャンベル委員お願いします。
キャンベル委員:
第五期の提言としては良いと思います。喜連川委員の発言に戻すと、高くゴールを掲げるだけではなく、そのゴールを達成できる蓋然性を構造の中に織り込んでいくのが将来構想、提言としては不可欠だと思います。
人文科学の立場から2点申し上げます。まず、日本は、一度も言語体系が交代したり、植民地化によって分断されたりすることなく、地質学の言葉で言うと年縞のように、近現代を含め1500年近くの様々なドキュメントが堆積した、世界の中でも稀有な状態にあります。データ駆動のために機械可読化し、それらを十分にマイニングできるようにすることが急務であり、日本の中の人文科学に限らず、世界と共有することが、パンデミックの時代においては必須だと思います。一方、日本の学術、特に人文科学をみると、情報・システム研究機構にデジタルヒューマニティーズを推進するCODHという素晴らしい組織はありますが、人文科学の研究者たちが十分に利活用しているかというと、大きな課題があります。資料3-1の図はよくできていると思います。オンラインアクセスのみならず、利活用を促進する一環としてデジタルヒューマニティーズそのものが手法として日本の中で人文科学者のみならず、シチズンサイエンスとして広がっていくような取組もぜひ入れていただきたいと思います。上保科学技術・経済課長が言われたフェローシップ、共同研究など、目標達成に向けた過程における人文科学分野の具体的な取組もぜひ積極的に提言の中に入れ込んでほしいと思います。
もう1点は、先ほどSDGsの話がありましたが、SDGsまで言うまでもなく、例えばマイナンバーカードの普及率が7月時点で17.5%と非常に低迷している現状があります。デジタルインフラへのアクセスや利活用をこれから促進しようとするとき、単に提供する、アクセスを向上させることだけではなく、当事者として国民を巻き込んでいくような仕組みが必要不可欠だと思います。一例として、EuropeanaというEUの大きなデジタルアーカイブがありますが、2014~2018年に第一次世界大戦の100周年を記念して、それぞれの家や機関が保有する4年間の様々な記録を、それぞれの国で国民が参加してトランスクリプション、翻刻するというプロジェクトが行われました。これによって、大変多くの資料が初めてアクセスできるようになると同時に、それぞれの地域・町・村の中で、あるいは機関の中で、人々が当事者意識を持ち、Europeanaという資源共有プラットフォームを充実・拡充させることができたという実績があります。これと同じように、国民が参加し、アクセシビリティを向上させていくようなインターフェース、双方向のプロジェクトをNDLでも検討していただき、提言の中に埋め込んではいかがでしょうか。
西尾委員長:
感銘を受けながら聞いていました。特に最後に言及された、市民レベルまで巻き込んだ形態でのNDLの在り方をぜひ基本計画の中で考慮していただきたいと思います。
竹内委員長代理:
全く異論はありません。Europeanaのモデルに関しては、今回の提言の中では、若干ですがジャパンサーチに触れることで類する活動への広がりを意識しています。しかし、キャンベル委員から御提案のあったレベルまでは書き込めていないので、この部分について部会でも検討したいと思います。
児玉委員:
基本計画策定に向けての提言はこれでよいと思います。2点ほど意見を述べさせていただきます。1点目はシステムのレジリエンス、セキュリティをどう考えていくかということです。もう1点はグローバルの中での位置付けです。ボーダーレスの時代にあって、このシステムやデータベースを日本人だけが使うというのはあり得ないと思います。グローバルな、いろいろなデータベースの中でのポジショニング、連携について何か一言キーワードとして入っていれば良いと思います。
西尾委員長:
ありがとうございました。グローバルな観点での活動をどう展開するか、また、システムのレジリエンス、セキュリティがますます重要となってきているという御指摘でした。これら2点についてよろしくお願いします。
佐藤委員:
私は基本方針検討部会のメンバーなので、竹内委員からお話があったように、今後委員の先生方の意見を基にして検討していきたいと思います。
西尾委員長:
いろいろと御尽力ありがとうございました。
戸山委員:
全体から見て、第五期の5年間のゴールがかなり幅広くよい形で出されているのではないかと思います。御尽力に感謝します。
思いつくままにいくつかお話させていただくと、まず一つは「人と機械が読む時代」ということで時宜を得て素晴らしいですが、利活用もかなり前面に出ているので、提言として「誰でもいつでもどこでも利活用できる時代を」というのをどこかに書くと良いと思います。
もう一つは、ボーダーレスな時代には国内外ということになるので、あらゆる情報提供というのも少し入れると良いと思います。
デジタル化が遅れているということで国もスピードを上げて動きつつあります。特に教育ではデジタル教科書を普及させようという時代に入ってきています。資料3-1の「教育シーン等での利活用モデル提示」について、特に小学校、中学校辺りをうまくリンクさせて、小学生、中学生がNDLのデータに自由にアクセスでき、利活用できる時代が来ればと思います。
もう一つ思うことは、前回の審議会でもお話をして、事務局も次期基本計画の個々の取組で大体5年でどのくらい予算がかかるということは当然把握していると思いますが、基本計画全体を含め予算がどのくらい必要ということは、せっかく国もデジタル化に向けて動いている段階なので、強く書き込んでみたらよいのではないでしょうか。こうした予算の見通しや喜連川委員が言われたような具体的な取組と共に、ロードマップを作成できれば、この5か年計画がより現実的なものになるのではないかと思います。
西尾委員長:
ありがとうございます。特に最後の部分の御意見と関連して、今までの第四期の基本計画では予算規模は書いてあるでしょうか。
上保科学技術・経済課長:
第四期の基本計画についても、特に予算額は示しておらず、個別の取組事項を詳細化した計画になっています。
西尾委員長:
今までの科学技術基本計画においても、具体的な金額を入れるかどうかというところが最後の大きな課題となってきました。戸山委員の御指摘は、明確にどのくらいの額で考えているのかを示した方が良いのではないか、そのことによって計画がより具体化するのではないかということだと思います。NDLの置かれている立場で金額を明示できるかという問題はあると思いますが、ぜひ積極的に示して、予算をきっちり獲得することを次期基本計画の一つの課題としていただければと考えます。先ほどの喜連川委員の御発言とも関連して、ロードマップの記載については具体的に検討していただければと思います。また、次期基本計画では利活用をより前面に出すため、そのことを表すようなキャッチコピーをタイトルに入れることができるかどうかを検討していただきたく思います。例えば、そのことが「人と機械が読む時代」に包含されているかどうか。喜連川委員は「人と機械が読む時代」についてどのように感じられたでしょうか。
喜連川委員:
竹内委員からの説明の背景には、NDLの所蔵資料の大半がフィジカルな本で、手を付けようと思ってもなかなか手を付けようがないということがあった。それをデジタル化する過程で、どうせやるなら長尾館長時代の大規模デジタル化のように純粋にビットパターンとしてデジタルにするのではなく、アノテータブルなというか、XML等による構造化にも触れられていたが、再利用可能な形のデジタル化をすべきだということで、machine readableという言葉を表出したのではないでしょうか。
竹内委員長代理:
御指摘のあったとおり、部会の議論ではPDFはやめようというのが基本的な理解でした。デジタル化したものを、AIの文脈でも構わないが、機械的な処理ができるテキストのセットとして利活用できるようにすることを考えるという方向性が今回のサブタイトルに含まれています。先ほど戸山委員から御発言があった「いつでもどこでも」というのは、正に今回の「人と機械が読む」という中に当然含意していると考えています。
西尾委員長:
「人と機械が読む時代」については、委員の皆様からいろいろな意見が出るかと思っていましたが、皆様納得されているということでよろしいですね。
藤垣委員:
よくまとまっていて、このコロナ禍のもとで部会長始め皆様の御努力に感謝申し上げます。資料3-2の2~3ページの「Ⅱ 基本的な視点」において、「1(1)データ駆動型研究の進展」と「1(3)海外の動向」をどうつなげるかという視点からコメントします。昨年ブリュッセルで、EUのオープンサイエンスについてのシンポジウム、ワークショップに参加して、「既に生産された知識を読むためのサービスの提供」という形でのオープンサイエンスだけではなく、知識生産の方、知識を作る側のオープンサイエンスも非常に進展していることを目の当たりにしました。それは村山委員が御指摘されていることと重なる部分がありますが、論文生産プロセスのオープン化で、データ収集のオープン化に限らず、査読プロセスのオープン化も含まれます。F1000(ファカルティサウザンド)という出版社が査読プロセスのオープン化に取り組んでいますが、これに相当する日本のプラットフォームは非常に少ない状況です。新型コロナウイルスのメカニズム、治療法や対策など、コロナ禍で時々刻々と生産される知見を世界中で共有するために査読を待つことはできません。査読プロセスを通さずに知識を共有することには利点と欠点があり、こうしたオープンサイエンスの最先端の状況も踏まえつつ、どのような新しいプラットフォームを提供できるのか。もちろんNDLだけでは難しいと思うので、科学技術振興機構や国立情報学研究所、日本学術会議などと連携しながら考えていく必要があります。村山委員が主張されたデータ駆動型研究における資源管理の重要性とも重なるところがあります。
もう一つは、キャンベル委員が言われた国民を巻き込んでいくという話とも関係します。提言素案では、シチズンサイエンスという形で言及されており、分野によって巻き込み方が違いますが、知識生産に市民が参画するということです。人文科学と自然科学でもかなり異なりますが、天文学や都市計画など、分野によっては、査読に市民を巻き込むことも十分考えられます。こうしたことも視野に入れなければ、海外の動向を踏まえた次期基本計画にしていくことは難しくなると思います。
西尾委員長:
プラットフォームの構築ということでお話いただきましたが、喜連川委員はどうお考えでしょうか。
喜連川委員:
ランセットゲートをどう見ているかがポイントとなります。ランセットゲートのスキャンダルは相当大きいインパクトを与えました。オープンというのは、性善説だけでは機能しないというのが1点です。もう1点は、研究現場からすると査読の嵐で、自分の論文を書く暇がないほど査読依頼が来ます。現状多くの研究者は、査読システムは既に破綻していると理解しています。査読に充てられる時間は、1論文当たりではごく短い時間しかありません。今の査読のシステムは、知の生産がそれほどかっ達でない時代に生まれたものであり、今日においてはそれが限界にきているというのが私の印象です。トップジャーナルに通った論文でも、後から見れば、サイテーションが高いものは全体からすると少ないはずです。arXiv(アーカイヴ)等のように、査読を全部バイパスして、発表をかっ達にするという最近の動きは誰も否定できません。査読を通じて、論文がハイクオリティになっているということは全くないという状況で、ブリュッセルでどういう議論があったのか非常に興味があります。
藤垣委員:
ランセットゲートのスキャンダルは、科学技術社会論の中でも分析を進めています。査読システムが限界というのはそのとおりで、現在の学術流通システムは専門誌共同体が紙媒体で作られていたときの慣習、かつ知識生産が論文の刊行(publish)を基礎として行われていたときの慣習に基づいて形成されています。それがデジタルの時代になってオープンになったときに、査読システムをそのままにして良いのか。先ほどPDFをやめようという話がありましたが、PDFをやめてそれだけで済むわけではなくて、紙媒体の知識生産システムを支えていたものを変えて行かないといけません。今は移行期なので、いろいろなものが紙媒体のまま残っています。PDFをやめようとするだけではなく、査読システムを何とかしようという方向で議論を進めなければならなくて、過去に作ったシステムを維持しながら新しいものになりつつある時代を私たちは生きています。例えばオープンサイエンスになったときに、知識の妥当性を保証するシステムは昔のままで良いのかということが哲学者を中心に議論されました。そういうことも問題となってきます。オープンサイエンスの最先端の議論であり、どこまでNDLの役割に組み込めるか分かりませんが、問題意識については提言でも言及があって良いと思います。
西尾委員長:
貴重なコメントありがとうございました。今は正に移行期で、新しいシステムにどう乗り移れるかという重要なターニングポイントにいます。そのシステムをどう作っていくかについて、NDLがどこまで具体的に関与するかは別にしつつ、その意識の下でのデータのオープン化を考えていかなければならないことは記す必要があると思います。
戸山委員:
いわゆる査読は大変な時代になっている。査読のレベルが高ければ良いジャーナルで素晴らしいと思いますが、オープン化が進み、どこかで査読を厳重にやるというのは難しい時代に入りました。読む側がしっかりという時代を今後構築しなければならないと感じます。
喜連川委員:
ランセットゲートというのは、The LancetやThe New England Journal of Medicineという医学系のトップジャーナルでRetraction(撤回)が起こったことです。著者にデータがおかしいので生データを見せるように言ったら、著者の一人でもあったサージスフィア社が契約を理由に生データの提出を拒否したため、Retractionとなりました。提言素案の最初の方に書いてあったデータ駆動ということで、今エルゼビアでも6割くらいがそうなっていますが、論文を出したときに証拠となる生データを提出するムードになっています。今回は急ぎすぎたのでそのお作法に則っていませんでした。これについては最近改善されて、彼らも査読を早くしすぎたということから、生データの提出を明確に義務付けることに方針を変更しました。「No more ランセットゲート」というのは現実のものになってきています。竹内委員は違う御意見をお持ちかもしれませんが、このような研究の生データの保存や管理はNDLには荷が重いのではないかというのが個人的な印象です。また、今のPDFについては、技術仕様上は構造化が可能であるため、それほど悪者ではないと思います。
西尾委員長:
私も同感です。NDLが何でも背負うと大変なことになってしまいます。ただ、藤垣委員の言われた、今正に重要なポイントに我々が遭遇しているという意識だけは何らかの形で示した方が良いと思います。
竹内委員長代理:
補足させていただきたいと思います。図書館の伝統的な役割として、科学研究の領域では、これまでなら論文という形で内容がフィックスされたものを安定的、長期的に保存してアクセスを保証することが明確にありました。その点が変わりつつある中で、NDLがどういうスタンスを取るのか、非常に難しいことは御指摘のとおりです。NDLが全てやるとは書けないし、全く無視して良いとも書けません。今議論のあったところについては、「Ⅱ基本的な視点」の「1(1)データ駆動型研究の進展」(資料3-2の2ページ)で、学術研究における学術情報流通の在り方の変容をどう視野に入れていくか書かせてほしいと思います。また、PDFを先ほど悪者にしたのは、言葉が足りませんでしたが、画像PDFのことです。
生貝専門委員:
情報、デジタルに関わる公共政策や法律の研究をしている観点から基本方針検討部会に参加しています。3点ほどコメントと補足をさせていただきます。キャンベル委員が言われたEuropeanaの第一次世界大戦100周年記念の特集は非常に素晴らしいものです。日本でもちょうど1か月前に日本版Europeanaと私がずっと呼んできたジャパンサーチが、正式版の公開に至ったところです。これにはNDLが非常に重要な役割を果たしました。まだEuropeanaほど全国の文化施設のデジタル資源をつなげる段階には至っていませんが、今後どう連携を拡大していくか、市民を巻き込んだ活動をどのように推進していくか、私も5年ほど内閣府での検討に関わっていますが、これを推進するのはNDLにしかできないと改めて強く感じています。次期基本計画の中でも、そのような点については強く触れていただきたいというのが1点目です。
2点目は、デジタル送信など利用者に対するデジタル資料の提供をいかに拡大するかです。拡大するテレワーク、オンライン教育に対して、信頼できる知識を適時に提供することが、社会全体のDXをNDLがどう後押ししていくかという課題に対応する手段の最たるものであると認識しています。コロナ禍の中で、著作権法がこの分野では非常に大きな、中心的な課題となります。竹内委員と私も参加して文化審議会著作権分科会に「図書館関係の権利制限規定の在り方に関するワーキングチーム」が作られ、ちょうど1か月前から既に3回のハイペースで検討をして、来年通常国会での法案提出に向けて準備を進めています。具体的には、著作権法第31条第3項に基づいてNDLが全国の図書館等に行っている絶版等資料の配信を、各家庭まで可能とするという方向性についてです。もう一つは、NDLだけではないが、著作権で守られている資料の複製物を郵送だと送れるがデジタルでは送れないという、アナログ時代の象徴ともいえることを見直していくという点です。もちろん来年の国会でどのように最終的に改正されるかによりますが、この提言と併せてNDLのデジタル資料の重要性が国民全体にとって極めて飛躍的に増すことになるものだと考えています。著作権法の改正が国会で成立するのは大体4~6月頃が多いと思うので、基本計画のタイミングにどう合わせていくかが難しいところですが、ぜひそこを強く意識していただきたいというのが2点目です。
3点目はテキストデータ化という論点です。グーグルは1企業で数千万冊の書籍のデジタル化、テキスト化を行い、検索できるようにして、ビッグデータとして利用しています。日本でも昨年施行された改正著作権法によって民間企業も含めて同じことが法律上はできるようになっていますが、民間企業がグーグルブックスのような巨大デジタル化、テキスト化プロジェクトを行うことは、我が国ではやはり難しいのではないかと改めて強く感じています。日本では、過去の知識をテキスト化し、機械も人も読める、検索できるような知識基盤を提供することはNDLにしかできないことだと確信しています。ぜひ強力に推進していただきたいと考えております。
西尾委員長:
基本方針検討部会で御尽力いただきまして誠にありがとうございました。3点御指摘ありましたが、非常に重要なことですので、竹内委員からお答えいただいてよろしいでしょうか。
竹内委員長代理:
大変重要な御指摘でした。特に2点目の著作権法については、現段階ではまだ具体的に書けていませんが、文化審議会著作権分科会法制度小委員会の図書館関係の権利制限規定の在り方に関するワーキングチームの議論が進み、10月下旬から11月までの間に一定の方向性が出る可能性があります。それがこちらの議論とタイミング的に合えば、成果をきちんと取り込みたいと考えています。喜連川委員から、長尾館長時代の大規模デジタル化の話がありましたが、あれが大きなインパクトをもたらさなかったのは、著作権法の縛りがずっと解けぬままデジタル化が行われたというところにあるのではないかと考えています。今回、デジタル化の動きと著作権法の制限を一定程度外すというのがほぼ同時に動いているというのは極めてまれなタイミングですので、この機を逃すべきではないと思っています。
西尾委員長:
著作権関係で御指摘いただきましたことは、私も非常に重要なことだと認識しました。ありがとうございました。
北本専門委員も基本方針検討部会で御尽力いただき誠にありがとうございました。御意見等ありましたらよろしくお願いします。
北本専門委員:
先ほど御指摘のありました「人と機械が読む時代」という部分につきまして、説明したいと思います。最初は「機械」だけで「人」は入っていなかったのですが、私が「人」を入れた方が良いと思った理由がいくつかあります。一つは、人と機械は全く無関係ではなく、お互いに恩恵を受ける関係にあるという点です。機械が裏で動いて勝手に何かやってくれるわけではなく、機械を動かすには、例えばデータセットを作るなど、人も作業をしてあげる必要があります。一方、人も機械の恩恵を受ける面があります。検索は分かりやすい例ですが、その他にも障害者への支援などいろいろな可能性があります。そこで、人と機械が共に読むというニュアンスを入れた方が、機械が勝手に動くわけではないという点が伝わりやすいのではないかと思っています。もう一つ、機械を図書館の新しい来館者として捉えるという点があります。機械を迎える入口も必要になるなど、図書館全体の姿を変えていく必要もあります。最後に、先ほど市民参加のお話がキャンベル委員からもありましたが、人のエンパワーメント、つまりDXで人も変わっていく必要があるという点です。例えば、くずし字については、市民がアプリで翻刻を続けていくと、市民自身の能力も上がっていくことが分かっています。こうしたエンパワーメントも含め、「人と機械が読む時代」とするのが良いのではないかと思って進めてきた次第です。
西尾委員長:
ありがとうございました。副題について御説明をいただきまして、さらに理解が深まりました。
塩崎委員:
今回の概要等を拝見して思うところをお話したいと思います。恒久的保存や利活用促進の基盤というNDLの使命から、中長期を対象としたこの取りまとめはそのとおりだと思っています。今回の提言を受けて策定する次期基本計画の対象期間が令和3~7年度の5年間であることを考えると、少し視点を設けた方が良いのではないかというところがあります。それは、ウィズコロナと呼ばれるものです。おそらくこの5年間くらいは新型コロナウイルス感染症対策と共に進まないといけないと思われます。先ほど喜連川委員が言われていたように、最終的なゴールに向けてこういうことに取り組まなければいけないということが全体としては書かれていますが、今後の5年間、どういう取組をさらに重点化していかなければならないのかを、ウィズコロナという観点から考慮していただく必要があると思っています。特に利用者の視点からすると、新型コロナウイルス感染症の影響でNDLが閉館になり提供サービスが低下してしまいました。レジリエンスという表現もありましたが、ウィズコロナの中でいかに提供するサービス低下を防ぐか、利用者の視点に立ち、優先的に取り組んでいくべきことを入れていただけると、今後の5年間の計画として非常に重要性のあるものとなると感じています。
西尾委員長:
貴重な御意見ありがとうございました。次期基本計画の期間は、ウィズコロナ、アフターコロナの中にあり、正に我々がどう克服していくか、その過程において新たなプラットフォームに図書館としてどう乗っていくかという重要な時期だと思います。そのようなことを踏まえて、塩崎委員から今後の方針として重要なことを御指摘いただきました。先ほど戸山委員から予算を明示することについてコメントがありましたが、財政状況が厳しい中、コロナ禍でどういう手を打って行くかを考え、予算にきっちり結び付けていくことの重要性について、御意見をいただいたと理解しています。塩崎委員からの御意見をいかしていただけるようにお願いします。
村山委員:
二つ気になっている点があります。一つは、科学技術情報を取り扱うに当たって、「研究」という言葉が大変目立つように感じています。研究は確かに重要なことですが、現代社会の研究は近代科学的方法論に基づいた研究であることが前提であり、単に研究成果だけ出ればよいとなると、先ほどのようなジャーナル出版の上での問題につながったり、そうした問題を軽視するような現場が発生してしまったりするおそれがあるのではないかと感じてます。現代では、例えば医療診断に基づいて病気休暇が取れるだとか、地質調査に基づいてマンションの建設が可能になるだとか、あくまで近代科学的方法論に基づいた社会運営がなされています。そのような知識の根拠としての科学という点を踏まえるニュアンスを少し出していただけるとよいのではと思いました。「研究」という言葉が、「科学」又は「科学研究」と置き換えた方がよろしいような箇所があれば置き換えることも御検討いただければ幸いです。
もう一つは、一般の方の目に触れるときの印象についてです。いわゆるジャーナリズムにおいて、科学的な研究成果であっても査読を経ないものがジャーナリズムを通じて、一般市民の誤解等を生んだりすることがあったように記憶しています。ピアレビューそのものの破綻を危惧されるような根本的な議論が先ほどもありましたが、信頼度を持った情報を立法府や国民に提供するためには、様々な知が保存され、お互い補完し合うことで信頼度を高めていくというような方法論しかないわけですから、そういう意味でもNDLが所蔵している知のアーカイブが社会にとって不可欠です。このため、「信頼度」という言葉がどこかにあるとNDLとしての立ち位置が重厚になるのではないかと感じました。
西尾委員長:
ありがとうございました。出現箇所によりますが、「研究」を「科学」に置き換えることについては、再度、竹内委員に御検討いただくということで良いでしょうか。藤垣委員はどのようにお考えでしょうか。
藤垣委員:
提言素案における「研究」という表現ですが、もしかすると「研究活動全般」を指している場合、「知識生産全般」を指している場合、「科学的知識」を指している場合など、異なるレベルのものを含んでいると思われます。それを全てまとめてそのまま「科学」に言い換えるというよりは、ケースバイケースではないでしょうか。
キャンベル委員:
藤垣委員がおっしゃることが重要で、一つ一つの文脈に即して言葉を確定してほしいと思います。日本語の「科学」には両義性がありまして、サイエンスという理系の知見という場合と、人文科学を包含した場合とがありますので、分野の隔たりが生じないようにしていただけるとありがたいです。
西尾委員長:
ありがとうございました。村山委員の御意見の趣旨は理解できますので、ケースバイケースで対応いただきたくお願いします。二つ目は、ある情報について、その信頼性あるいは質保証の問題を考えたときに、NDLが有する莫大な情報をどのように有効利用していくかということは非常に重要ではないかということだったと思います。私も重要な課題だと思っていますので、竹内委員の方でお考えいただけたらと思います。
塩崎委員:
資料3-1の2ページに「2(1)データのオープン化と教育等における利活用促進」とあります。先ほどの説明では教育シーン等の利活用のモデルを示すという話があり、もちろん進めていただきたいのですが、本文(資料3-2)を見ても、「例えば、教育シーン」としか書かれていません。タイトルに「教育等」と書かれており、特別感があるのかなと思って見ると、そういう感じでもない。タイトルに入れるのであれば、もう少し教育について内容を充実していただくか、フェローシップや共同研究が主であるなら「教育等」を落としたタイトルにするか、御検討いただければありがたいと思います。
西尾委員長:
ありがとうございます。言われたとおりだと思います。データのオープン化とともに利活用をどう進めるかということで、御指摘いただいた部分は重要だと思いますので対応をお願いします。
貴重な御意見をいただきありがとうございました。今日いただきました貴重な御意見を部会にフィードバックして、素案を改訂してもらうようお願いいたします。様々な御意見をいただきましたが、非常に貴重な意見ばかりであり、私自身大変勉強になりました。今後ともよろしくお願いします。
8. その他
西尾委員長:
事務局から、今後の日程について説明があります。
上保科学技術・経済課長:
資料4を御覧ください。
本日の提言素案に寄せられた御意見等を反映させるため、基本方針検討部会を開催し、その上で12月から1月までの間に開催する第13回審議会で、次期基本計画策定に向けた提言を館長にお渡しいただくことを考えています。
9. 閉会
西尾委員長:
予定していた議事は全て終了しました。貴重な御意見、御指摘ありがとうございました。事務局から連絡事項があります。
上保科学技術・経済課長:
本日は、貴重な御指摘、御提案をいただきましてありがとうございました。
本日の審議会の議事録につきましては、案がまとまり次第、委員の先生方にメールで送付します。御多忙のところ大変恐縮ですが、内容の御確認をお願いします。確認が終わりました議事録は、委員長から御承認をいただいた後、当館ホームページで公開します。
本日はありがとうございました。
西尾委員長:
それでは本日はこれにて閉会とします。皆様、お忙しいところありがとうございました。
(閉会)
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