1 塵劫記
そろばんによる計算技法が日本に定着した時期の算書として、当時一番普及した『塵劫記』のうち、国立国会図書館で所蔵する2点を展示する。
1 新編塵劫記 3巻
吉田光由著 刊 1冊 <104-180>
上・中・下の三巻本。刊行年、書肆名を欠く。
編者の吉田光由(1598-1673)は、そろばんのマニュアルである『塵劫記』を刊行したが、生涯の間に何度も改版を重ねている。寛永11年(1634)版が最も普及したが、吉田自身が出した最後の版が寛永18年(1641)の遺題本である。その後も様々な版が出され、ここに紹介をする『新編塵劫記』もその一つである。内容は寛永11年版に近い。
上巻にはそろばんによる乗除計算を主として載せ、以下、中巻、下巻には実用的な問題と遊戯的な問題を取り混ぜて収録している。収録した問題には明確な順番の規則性があるわけではない。田畑の面積計算、川や堤の普請に関する問題、継子立てやねずみ算など、多様な問題を載せ、読者を飽きさせない工夫が盛り込まれている。江戸時代を通じてそろばんの教科書として普及していた『塵劫記』の中でも、よく広まった版がこの『新編塵劫記』である。
2 新編塵劫記 3巻
吉田光由著 元禄2(1689)刊 1冊 <166-133>
前項『新編塵劫記』を参照。元禄2年(1689)の刊記が末尾にある。
冒頭の序文には「新板塵劫記」、版心には「増補塵劫記」とある。また、本文の上段には、補足が加えられている。