資料と解説・第3章 GHQ草案と日本政府の対応
3-28 極東委員会の関与
極東委員会は1946(昭和21)年2月26日にワシントンで第1回会議を開き、その活動を開始した。3月6日に日本政府が行った「憲法改正草案要綱」の突然の発表とマッカーサーの支持声明に対し、同委員会では、マッカーサーが権限を逸脱したとの批判が巻き起こった。そこで同委員会は3月20日付け文書を発し、憲法案が可決される前にこれを審査する機会が同委員会に与えられるべきであると主張した。4月10日には、憲法改正問題に関する協議のためGHQ係官の派遣をマッカーサーに求めると決定したが、マッカーサーはこれを拒否した。
東京では、対日理事会が4月5日に初会議を行ったが、その席上マッカーサーは、憲法草案は日本国民が広範かつ自由に議論しており、連合国の政策に一致するものになるだろうと主張した。
しかし極東委員会では、米国代表であるマッコイ議長も憲法問題に関してマッカーサーを支持していなかった。このことは、GHQ憲法問題担当政治顧問として来日した政治学者のケネス・コールグローヴからホイットニー民政局長に伝えられた(4月24日付けホイットニー文書)。マッコイ議長自身もマッカーサーに対する4月25日付け打電で、新憲法成立以前に極東委員会が審査すべきことを訴えている。しかし日本で多くの知識人と接触し、憲法草案が広く支持されていることを知ったコールグローヴは、マッコイに対し、極東委員会での審査は時間の浪費になると伝え、GHQの立場を擁護した(4月26日付け書簡)。
極東委員会は、4月10日に予定された衆議院総選挙に対しても、国民が憲法問題を考える時間がほとんどないとして、その延期を求めていた。しかし総選挙は予定どおり実施され、きたるべき第90回帝国議会において「帝国憲法改正案」が審議されることは既定路線となっていった。極東委員会は、帝国議会の召集が間近に迫る5月13日、「審議のための充分な時間と機会」、「明治憲法との法的持続性」および「国民の自由意思の表明」が必要であるとする「新憲法採択の諸原則」を決定した。
資料名 |
[Draft Constitution: FEC policy decision, March 20, 1946] |
年月日 |
21 March 1946 |
資料番号 |
極東委員会文書 Records of the Far Eastern Commission, 1945-1952 Box No. 204 "Policy No. 1;Draft Constitution(FEC031/1 1946.3.21)" <Sheet No. FEC(A)1020> |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
米国国立公文書館(RG43) |
注記 |
マイクロフィッシュ |
資料名 |
Verbatim Minutes of the First Meeting, Allied Council for Japan |
年月日 |
6 April 1946 |
資料番号 |
対日理事会文書(米国代表) Records of U.S. Element of the Allied Council for Japan "092.32 Verbatim Minutes of the 1st Meeting, Allied Council for Japan (1a-45)" <YF-A9, Roll No. 8> |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
米国国立公文書館(RG331) |
注記 |
マイクロフィルム |
資料名 |
Proposed Communication to the Supreme Commander forthe Allied Powers Requesting Consultation on Procedures for the Adoption of a Japanese Constitution |
年月日 |
10 April 1946 |
資料番号 |
極東委員会文書 Records of the Far Eastern Commission, 1945-1952 Box No. 11 "FEC028-031/47" <Sheet No. FEC(A)0148> |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
米国国立公文書館(RG43) |
注記 |
マイクロフィッシュ |
資料名 |
General Whitney to C-in-C, dated 24April 1946 [re discussion on 22 April 1946 with Professor Colegrove] |
年月日 |
24 April 1946 |
資料番号 |
GHQ/SCA 民政局文書 GHQ/SCAP Records Government Section;Box No. 2225 "Dr. Kenneth Colegrove" <Sheet No. GS(B)02107> |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
米国国立公文書館(RG331) |
注記 |
マイクロフィッシュ |
資料名 |
Incoming Message from Washington (US representative,FEC) (WAROPDIV) to SCAP (Personal for MacArthur), nr W 85442, dated 25 April 1946 |
年月日 |
25 April 1946 |
資料番号 |
GHQ/SCAP最高機密ファイル GHQ/SCAP Records; Top Secret Records of Various Sections. Administrative Division; Box No. AG-8 "334:Allied Military Council" <Sheet No. TS00080> |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
米国国立公文書館(RG331) |
注記 |
マイクロフィッシュ |
資料名 |
Letter from Kenneth Colegrove to General Frank R. McCoy, dated 26 April 1946 |
年月日 |
26 April 1946 |
資料番号 |
極東委員会文書 Records of the Far Eastern Commission, 1945-1952 Box No. 237 "SCAP-FEC Liaison" <Sheet No. FEC(B)1679-1680> |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
米国国立公文書館(RG43) |
注記 |
マイクロフィッシュ |
資料名 |
Criteria for the Adoption of a New Japanese Constitution |
年月日 |
13 May 1946 |
資料番号 |
極東委員会文書 Records of the Far Eastern Commission, 1945-1952 Box No. 204 "Policy No. 6; Principles Governing the Machinery for the Adoption of a New Japanese Constitution (FEC 031/5, 1946.5.13)" <Sheet No. FEC(A)1021> |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
米国国立公文書館(RG43) |
注記 |
マイクロフィッシュ |
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