第1部 日本の近代化とフランス

第2章 産業

安政5(1858)年の日仏修好通商条約締結を起点に、日本とフランスの経済関係は始まった。
当時、フランスでは皇帝ナポレオン3世(1808-1873、在位1852-1870)の下、産業が急速に発達し、新たな海外市場が求められていた。元治元(1864)年に駐日公使に着任したレオン・ロッシュ(1809-1901)は、薩長両藩を支援するイギリスに対抗して幕府との結びつきを強め、横須賀造船所の建設を資本・技術の両面から支援した。
明治維新後は、明治3(1870)年に発足した工部省を中心に殖産興業政策が進められ、特に製糸や採鉱の分野でフランスからの技術導入が図られた。民間においても、織物やワイン醸造の分野で技術を学ぶためにフランスへ留学する動きがあった。また、日本資本主義総体の発達をみるとき、幕末に渡仏し西欧の産業社会を実見した渋沢栄一(1840-1931)の果たした役割は重要である。