資料と解説・第1章 戦争終結と憲法改正の始動
1-19 近衛をめぐるアチソン政治顧問の動き
米国務省派遣の最高司令官政治顧問であるジョージ・アチソンが、憲法改正にとりかかった近衛について国務省に報告した文書類。マッカーサー・近衛会談のあった1945(昭和20)年10月4日、アチソンは、米国政府の憲法改正に関する方針を国務省に問い合わせた。同月8日、助言を求めた近衛に対し、アチソンは「個人的で非公式なコメント」として、国会の権限の弱いことや基本的人権保障の欠如など、明治憲法の問題点を指摘して、憲法の改正に関して具体的な提案を行った。この会談内容を国務省に報告したアチソンに対し、国務省は10月17日付けの返電でアチソンの指示内容を追認し、米国政府の公式政策は近い将来に決定されるとした上で、当面の見解を伝えた。続いてアチソンは、10月23日付け覚書において、近衛がマッカーサーに対して、日本での憲法改正作業に助言を与える米国の憲法専門家の招聘を依頼する予定であることを明らかにしている。アチソンは、幣原内閣が憲法問題調査の開始を発表したこの時点でも、まだ近衛の憲法改正作業を擁護していた。
しかし、近衛の憲法改正作業に対する内外の批判が厳しいことを受けて、11月1日、GHQは、「近衛は憲法改正のために選任されたのではない」と発表した。アチソンは、11月5日トルーマン大統領に宛てて、10月4日のマッカーサー・近衛会談で、マッカーサーは日本政府の「行政機構」を改革するべきだと述べたのに対し、近衛の通訳が「憲法は改正されるべきだ」と訳してしまったと報告し、近衛が憲法改正作業を始めた理由を通訳の「誤訳」に負わせようとした。
一方、マッカーサーは、本国政府に直結しているアチソンを憲法改正問題から除外し始めた。11月7日付けの国務次官宛てアチソンの書簡は、マッカーサーが憲法改正問題から国務省を除外しようとしていることを報告している。アチソンはこの書簡を、GHQに読まれる可能性のある電報を避け、わざわざ航空郵便で送った。この時期からマッカーサーは、憲法問題をGHQ内で扱う方向へと向かった。
資料名 |
Incoming Telegram from Atcheson to Secretary of State dated October, 1945 |
年月日 |
October 4, 1945 |
資料番号 |
国務省10進分類ファイル State Department Records Decimal File, 1945-1949 "740.0019 CONTROL (JAPAN)/10-445" <Sheet No. SDDF(A)00446> |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
米国国立公文書館(RG59) |
注記 |
マイクロフィッシュ |
資料名 |
George Atcheson, Jr. to the Secretary of State, Subject: Revision of Japanese Constitution; Discussion with Prince Konoye |
年月日 |
October 10, 1945 |
資料番号 |
在日米国大使館領事館・政治顧問部文書 Records of Japan, Tokyo Embassy, Records of Japan, Tokyo Consulate General and Records of Office of the U. S. Political Advisor for Japan, Tokyo - Office of the U.S. Political Advisor for Japan, Tokyo, Classified General Correspondence, 1945-52- Box No. 3 "1945 Volume VI:800-873" <Sheet No. FSP03457> |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
米国国立公文書館(RG84) |
注記 |
マイクロフィッシュ |
資料名 |
Telegram Received From: Secretary of State dated October 17, 1945. |
年月日 |
October 17, 1945 |
資料番号 |
在日米国大使館領事館・政治顧問部文書 Records of Japan, Tokyo Embassy, Records of Japan, Tokyo Consulate General and Records of Office of the U. S. Political Advisor for Japan, Tokyo - Office of the U.S. Political Advisor for Japan, Tokyo, Classified General Correspondence, 1945-52- Box No. 3 "1945 Volume VI:800-873" <Sheet No. FSP03457> |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
米国国立公文書館(RG84) |
注記 |
マイクロフィッシュ |
資料名 |
Memorandum for: Supreme Commander and the Chief ofStaff. Subject: Revision of the Constitution; Suggested Employment of an American Constitutional Expert. |
年月日 |
October 23, 1945 |
資料番号 |
GHQ/SCAP 高級副官部文書 GHQ/SCAP Records, Adjutant General's Section Box No. 785-5 "091.1:#1" <Sheet No. AG(D)03324-03327> |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
米国国立公文書館(RG331) |
注記 |
マイクロフィッシュ |
資料名 |
Letter from George Atcheson, Jr. to the President dated November 5, 1945. |
年月日 |
November 5, 1945 |
資料番号 |
国務省10進分類ファイル State Department Records Decimal File, 1945-1949 "740.00119 CONTROL (JAPAN)/11-2545" <Sheet No. SDDF(A)00456> |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
米国国立公文書館(RG59) |
注記 |
マイクロフィッシュ |
資料名 |
Letter from George Atcheson Jr. to Dean Acheson, Under Secretary of State dated November 7, 1945. |
年月日 |
November 7, 1945 |
資料番号 |
国務省10進分類ファイル State Department Records Decimal File, 1945-1949 "894.011/11-745" <Sheet No. SDDF(B)00074> |
所蔵 |
国立国会図書館 |
原所蔵 |
米国国立公文書館(RG59) |
注記 |
マイクロフィッシュ |
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