開館70周年記念展示「本の玉手箱―国立国会図書館70年の歴史と蔵書―」
開館70周年記念展示「本の玉手箱―国立国会図書館70年の歴史と蔵書―」
日本の本も美しさではひけを取らない。まずは、大名や公家などが手にした極彩色の奈良絵本(室町時代後期から江戸時代前期頃まで製作されていた絵入彩色写本)、料紙や筆跡の美しい写本を展示する。続けて、趣向をこらした庶民向けの戯作や絵びら、外国人向けの縮緬本(ちりめんぼん。印刷した和紙をちりめん状に加工した本)を展示する。
細密、華麗な描写の絵本
〔江戸時代前期〕写【WA32-21】
聖徳太子の生涯を、挿絵を交えて描いた奈良絵本。挿絵は全47図。挿絵の上下の霞に小さく切った金箔を散らし、極彩色で緻密に描かれている。
美麗な意匠
〔紫式部 著〕〔江戸時代前期〕写【WA21-26】
『源氏物語』の1巻を1冊にあて、表紙中央に題簽(だいせん。書名を書いた紙)を貼り、巻名を記す。本文には亀甲、市松模様、墨流し、あるいは金銀泥で草木や霞が描かれた料紙が使われている。東久邇宮(ひがしくにのみや)家旧蔵と伝えられる。
合巻本の美しさと仕掛け
仮名垣魯文 作 一猛斎芳虎 画 錦橋堂山田屋庄次郎 文久2(1862)年【W114-13】
庶民向けの合巻本(江戸時代の絵入小説)の一つ。擬人化された狐や狸が繰り広げる恋愛騒動を描く。主人公の紺三郎は四代目中村芝翫(なかむら しかん)の、ヒロインの玉垣は三代目沢村田之助(さわむら たのすけ)の顔に似せる。
美しい絵びらと文化人の交流
〔梅素亭玄魚 明治7(1884)年〕製作【WA22-3】
写字を職とし狂歌を好み、びら絵の名人とも称された梅素亭玄魚(ばいそてい げんぎょ)のもとに贈られた「小びら」(302枚)を貼り込んだもの。贈り主は画家、落語家、歌舞伎役者などで、玄魚の交際の広さが感じ取れる。
絵びらとは、絵入りのびらのこと。多くは刷り物として現存する。明治6(1873)年から明治30(1897)年頃にかけて、商店の開業や書画会の開催などの際、「熨斗進上」(のししんじょう)という常套文句と、祝いの寄贈品名、贈り主名、宛名などを記した手書き(肉筆)の絵びらを贈ることが流行した。のちに、この絵びらは「進上びら」、「祝いびら」と呼ばれたが、その中で伊予柾紙(いよまさがみ)を半分に切った小さいものを「小びら」(展示資料)といい、粋人たちが競って収集の対象にした。
海外へ発信された絵本
by Mrs.W.H.Smith T.Hasegawa 1892【B-65】
長谷川武次郎出版の縮緬本(ちりめんぼん)。著者「いぎりす人 寿三須婦人」は、日本の子どもの生活や、その背景にある日本の伝統的な暮らしを自由なテーマで記述している。挿絵の子どもらは躍動感があり、本文と巧みに繋がるよう構図が工夫されている。