開館70周年記念展示「本の玉手箱―国立国会図書館70年の歴史と蔵書―」
開館70周年記念展示「本の玉手箱―国立国会図書館70年の歴史と蔵書―」
当館は錦絵なども所蔵している。その数およそ1万点。今回は錦絵とともに川瀬巴水(かわせ はすい)などの近代の絵画も展示する。また、動物や植物などを描いた博物誌資料も和洋ともに多数所蔵しており、特に日本の博物誌資料については、全国屈指のコレクションである。デジタル化、インターネット上での公開も進んでいる。
美しく、華麗な歌舞伎役者たち
〔歌川〕豊国(三代)画〔江戸時代後期〕【234-38】
東海道や木曽街道の各駅に歌舞伎役者を配した錦絵など、114枚の錦絵を貼り込む。幕末浮世絵界の重鎮で、役者絵の第一人者であった三代豊国の円熟した技法をうかがい知ることができる。
右には、日本橋を背景に、曽我兄弟の仇討ちで知られる曽我五郎時致(そがのごろうときむね)(五代目市川海老蔵)が描かれ、左には、板橋戸田川を背景に、『南総里見八犬伝』に登場する浪人の網干左母次郎(あぼしさもじろう)(三代目嵐吉三郎)が描かれている。いずれも嘉永5(1852)年の作品。
デジタルコレクション
右には、熊谷宿の熊谷寺を背景に、蓮生坊(れんしょうぼう)(五代目市川海老蔵または八代目市川団十郎)が、左には、深谷宿の岡部ヶ原を背景に、兎原の田五平(うばらのたごへい)(三代目浅尾奥山)がそれぞれ描かれている。いずれも嘉永5(1852)年の作品。
デジタルコレクション
「大津画踊尽」(展示箇所は3枚続きの内の2枚)と題し、二代目中山文五郎の鬼の寒念仏、初代坂東しうかの藤娘、三代目岩井粂三郎の鷹匠など、大津名産の戯画大津絵に登場するキャラクターに扮した歌舞伎役者が描かれている。嘉永年間(1848-1854年)の作品。
デジタルコレクション
右には、浪華新町の桜を背景に、若旦那の与五郎(八代目市川団十郎)と遊女あづま(二代目尾上菊次郎)が描かれ、左には、東都吉原の桜を背景に、遊女の揚巻(初代坂東しうか)と侠客の助六(八代目市川団十郎)が描かれている。いずれも嘉永5(1852)年の作品。
デジタルコレクション
浮世絵に見る美しい日本
〔歌川〕豊国(二代)画〔天保4-5(1833-1834)年頃〕【WA33-7】
二代豊国の代表作。武蔵、相模、駿河などの8か所の景勝地を、近江八景などをまねて描く。当館が所蔵するものは「玉川秋月」を欠く。北斎や広重の風景画に刺激を受け、藍、緑、暖色を多用し、重厚で丹念な作風となっている。
美しい団扇画(うちわえ)と歌舞伎役者たち
〔歌川〕豊国(三代)〔ほか〕画【237-377】
歌舞伎役者の似顔絵からなる団扇画154枚を貼り込んだもの。団扇画とは団扇に貼る用途で制作された浮世絵版画のこと。
右には、船頭金五郎(役者は五代目坂東彦三郎)(安政3(1856)年作)が、左には、「見立五人男 御贔屓恩指」という画題で、行灯の下、文を読み解く粋でいなせな若い男(役者不明)が描かれている(嘉永5(1852)年作)。
デジタルコレクション
展示箇所には「花菖蒲皐月彩色」という画題で、仲睦まじい若い男女(役者不明)が描かれている(安政5(1858)年作)。
デジタルコレクション
五渡亭国貞 画〔江戸時代後期〕【237-376】
歌舞伎役者の似顔絵からなる団扇画90枚を貼り込んだもの。五渡亭国貞はのちの三代豊国。団扇画とは団扇に貼る用途で制作された浮世絵版画のこと。
右には、四代目坂東三津五郎が演じる「菅原伝授手習鑑」(すがわらでんじゅてならいかがみ)の梅王丸(天保3(1832)年作)が、左には、三代目関三十郎と初代沢村訥升(さわむら とっしょう)が演じる「一谷嫩軍記」(いちのたにふたばぐんき)の熊谷直実とその妻さがみが描かれている(天保8(1837)年作)。
デジタルコレクション
右には五代目市川海老蔵が演じる歌舞伎十八番「矢の根」の曽我五郎時致(そがのごろうときむね)が(天保元(1830)年作)、左には初代嵐冠十郎と十二代目市村羽左衛門が演じる「関取二代勝負付」の鬼ヶ嶽と秋津嶋が描かれている(天保7(1836)年作)。
デジタルコレクション
叙情豊かに描かれた、美しい日本の原風景
〔川瀬〕巴水〔画〕〔川瀬〕巴水 昭和10(1935)年 写【寄別7-3-1-7】
〔川瀬〕巴水〔画〕大正14(1925)年【寄別7-6-1-1】
〔川瀬〕巴水〔画〕〔川瀬〕巴水 昭和9(1934)年 写【寄別7-3-1-7】
〔川瀬〕巴水〔画〕大正10(1921)年【寄別7-3-1-3イ】
川瀬巴水(かわせ はすい)は、近代風景版画の第一人者。日本各地を旅行し、写生した風景画やその原画をもとにした版画を多く残した。「旅情詩人」「旅の版画家」などと呼ばれ、海外でも高く評価されている。
広重に魅せられた外国人版画家
〔ノエル・ヌエット 作〕土井版画店 昭和11(1936)年【本別7-327】
〔ノエル・ヌエット 作〕土井版画店 昭和11(1936)年【本別7-314】
ノエル・ヌエットは、フランスの詩人、版画家。日本に36年間滞在し、フランス語の教師として教鞭をとるかたわら多くの詩を書き、戦前戦後の東京の街を歩いては、その面影を巧みにスケッチし、版画にした。展示資料は、「東京風景」と題した24点のシリーズの内の1枚。歌川広重の影響を強く受け、友人たちはヌエットを「広重四世」と呼んだという。
参考:
『東都名所日本橋之白雨』(『日本橋図絵』のうち)
歌川広重 画 喜靏堂 【寄別7-8-2-2】
デジタルコレクション
浮世絵に見る美しい京都
長谷川貞信(初代)画【寄別2-8-2-2】
「浪華百景」30枚、「都名所」30枚を貼り込んだもの。初代長谷川貞信は大坂の浮世絵師で、幕末上方浮世絵界の第一人者。
展示箇所の右は「都名所之内 三十三間堂後堂之圖」。細緻にして手堅く、遠近法にも狂いがない。左は「都名所之内 如意嶽大文字」。夏の夜、五山の送り火で知られる大文字の美しい情景が描かれている。
デジタルコレクション
展示箇所の右は「都名所之内 比叡山山上より湖水を望」。正面に見えるのは三上山。左は「都名所之内 三條大はし」。いずれも遠近法が巧みに用いられ、空や湖、川のグラデーションも美しい。
デジタルコレクション
お殿様の描いた美しい鳥たち
牧野貞幹〔画〕牧野貞幹〔江戸時代〕写【寄別1-4-15】
笠間(現茨城県笠間市)藩主、牧野貞幹(まきの さだもと)が、忙しい政務の合間に描き残したもの。271品の鳥が描かれ、羽の特徴なども書き添えられている。素直な画風で、絵師に学んだ確かな筆運びを感じさせる。
西洋の花譜とどっちが美しい?
〔毛利〕梅園 書画并撰著〔毛利〕梅園〔江戸時代後期〕写
旗本で博物画の名手として知られた毛利梅園(もうり ばいえん)の画譜のうち最大のもの。江戸時代屈指の植物図譜の一つ。春349、夏617、秋277、冬34品を収録。文政3(1820)年から嘉永2(1849)年に描かれたもので、花の特徴が実によく捉えられている。
学術的で芸術的な花譜
par P.J. Redouté Chez l'auteur, Impr. de Didot jeune 1802-1816【WB32-2(44)】
フランスで活躍し、植物画の芸術性を高めたピエール・ジョセフ・ルドゥーテの代表作。ユリ科を対象としているが、今日でのヒガンバナ科やアヤメ科なども含む。スティップル技法(点刻法)により、輪郭のない美しい多色刷りを実現した。英国鉄道年金財団旧蔵。
展示巻号左から
プラントハンターの先駆
Alecto Historical Editions in association with the British Museum (Natural History) 1980-1990【WB37-1】
クック船長の第一次航海(1768-1771)に同行したジョセフ・バンクスは、オーストラリアなどから大量の植物標本と、同行した画家パーキンソンによるドローイングを持ち帰った。帰国後、図譜の発行を企画したが実現せず、大英博物館に保管されていたが、1980年から1990年にかけて、700枚を超す多色刷り銅版画の図譜が製作された。