開館70周年記念展示「本の玉手箱―国立国会図書館70年の歴史と蔵書―」
開館70周年記念展示「本の玉手箱―国立国会図書館70年の歴史と蔵書―」
当館の蔵書の中には珍しい本も数多く存在する。今回は、正岡子規の自筆資料やコレクターが集めたスクラップブック、風変りな装丁が施された本、仕掛絵本を集めてみた。ただただお楽しみいただきたい。
俳人、子規の息づかいが聞こえる?
〔正岡子規 著〕〔正岡子規 明治35(1902)年〕写【WB41-61】
日本の近代文学に多大な影響を及ぼした俳人、歌人の正岡子規が臨終間際に書き残した三句。明治35(1902)年9月18日の午前11時頃、紙を貼りつけた画板を妹の律に持たせ、仰臥しながら記した。翌19日午前1時頃、子規の息は絶えた。満34歳の若さであった。病魔に苦しみながらも、死の直前まで俳人として生き抜いた壮絶な姿がうかがえる。
(書き起こし)
をととひのへちまの水も取らざりき/糸瓜咲て痰のつまりし佛かな/痰一斗糸瓜の水も間にあはず
楽しいかな?俳句でカルタ
〔正岡子規 明治27-28(1894-1895)年頃〕写【WB41-55】
正岡子規が、百人一首にならって、松尾芭蕉とその門人など100人の句を選んでカルタに仕立てたもの。明治27(1894)年から明治28(1895)年頃までに、子規の母と妹の律が薬袋紙を貼って作った札に、子規が句を書いたといわれる。読み手が句を読み、その句が書かれた札を取りあう遊びだが、子規自身は、このカルタで遊ぶことはほとんどなかった。
今となっては“お宝”-こんなものが残されていた-
〔明治時代〕製作【本別9-24】
引札(ひきふだ。チラシのこと)、びら、菓子や箸の包み紙、略暦など各種の刷り物を貼り混ぜたもの。武蔵国大里郡吉見村字冑山(現埼玉県)の豪農で、埼玉県議会議長や貴族院議員を務め、郷土史家としても知られた根岸武香(ねぎし たけか)の旧蔵書(冑山文庫 かぶとやまぶんこ)。
蓑虫(ミノムシ)を使った本
小島烏水 著 書物展望社 昭和9(1934)年【663-83】
「書痴」と自称した斎藤昌三が主宰する書物展望社が手がけた特殊装丁本。表紙は木の皮を薄く挽いたもの、モザイク状に貼り込まれているのは蓑虫の蓑。1冊につき、約30匹分が使われている。980部制作され、斎藤は「蓑虫供養でもせずばなるまい。」と『新富町多与里』に書いている。
竹好きに捧げる本
木村毅 著 書物展望社 昭和8(1933)年【643-5】
竹を好み、「竹軒」と号した西園寺公望にちなんだ、竹づくしの装丁。背は割竹三枚を紐で組み合わせ、表紙は筍皮装、背文字は竹に彫刻。綴じた紐は堅固な上、机も傷めないようにとの用心でもある。筍皮が長い間も決して剝げないよう工夫した結果、汚れも綺麗にとれるのが妙味である。斎藤昌三が主宰する書物展望社の特殊装丁本。
日本の意匠、扇子型本
C.E. Tuttle Co.〔1962〕【792.0952-T552p】
伝統的な日本の能舞台で使用される扇子15種類を海外向けに紹介した扇子型本。色鮮やかな錦織で装丁された表紙を開くと、日本の四季の代表的な景色を描いた扇子の数々を楽しむことができる。
ヴィクトリア朝の仕掛け絵本
E. Nister E.P. Dutton〔18--?〕【Y17-B5757】
19世紀イギリスでは、印刷技術の発展とともに多色刷りの絵本が出版されるようになり、精巧な仕掛け絵本も次々と登場した。展示資料を手掛けたアーネスト・ニスターは仕掛け絵本専門の出版社を興し、成功した。物語のイメージに合わせたヴィクトリア朝時代の愛らしい子供達や動物の挿絵が立体的に見えるように作られている。