第2章 関孝和

コラム なぜ、π/4=tan-1乗1=4tan-1乗(1/5)-tan-1乗(1/239)となるのか(難易度3)

角度αについて

tanα=1/5 (tan-1乗(1/5)=α)

であるとします。すると、

tan2α = 2tanα/(1-tan2乗α)={2×(1/5)}/{1-(1/5)2乗} = 10/24 =5/12

となり、これを繰り返すと

tan4α= 2tan(2α)/(1-tan2乗(2α)) ={2×(5/12)}/{1-(5/12)2乗} = 120/119 = 1+1/119 = tan(π/4)+1/119

です。

ところで、tanの加法定理

tan(α+β)=(tanα+tanβ)/(1-tanαtanβ)

により、

tan(4α-π/4)=(tan4α-tan(π/4)/(1+tan4α×tan(π/4))=(1/119)/(1+120/119))=1/239

となりますので、

tan-1(1/239)= 4α-π/4= 4tan-1(1/5)-π/4

すなわち

π/4=4tan-1(1/5)-tan-1(1/239)

が導かれます。この

tanα=1/5

の時、

tan4α= tan(π/4)+1/119

が成り立つことはロンドンの天文学者J. マチンが発見し、彼はこの関係と

tan-1x=x-x3/3+x5/5-x7/7+ …

を使って、1706年に円周率を小数点以下100桁まで計算しました。8桁の電卓を使って、

π=16tan-1(1/5)-4tan-1(1/239)≒16(1/5-1/3x53+1/5x55-1/7x57)-4(1/239-1/3x2393)

を計算してみますと、3.1415918 という数字が得られます。

その後も

π=24tan-1(1/8)+8tan-1(1/57)+4tan-1(1/239)  ,π=48tan-1(1/18)+32tan-1(1/57)-20tan-1(1/239)  ,π=32tan-1(1/10)-4tan-1(1/239)-16tan-1(1/515)

などの関係式が見つかり、さらに大きな桁の円周率計算が行われました。

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