第1部 歴史をたどる

コラム

コラム 平賀源内と蘭学

平賀源内(1728-79)は当時の蘭学の摂取のしかたの一面を代表する人物である。彼は企業家、戯作者など多方面の顔を持つが、その目指すところは西洋の学術も取り入れて広く世に貢献することであり、薬品会(物産会)の開催、火浣布の製作やエレキテルの復元などもその一環であったようだ。オランダ語はほとんど解さなかったものの、ドドネウス、ヨンストンをはじめとする博物図譜を収集、江戸参府の商館長にも面談している。しかし、彼の事業は世人に理解されず、しだいに生活がすさみ、ついには誤って人を殺して獄中に没した。親友であった杉田玄白は「非常の人」としてその死を惜しんだ。

平賀源内の肖像

先哲像伝

原義胤編 写 7冊 <か-74>

著名人の肖像を集め、略伝を付したもの。第4冊「詞林部」所収の源内像は、やや小太りに描かれており、一般に知られる痩身の肖像と異なるが、桂川月池老人(森島中良または桂川甫周か)が写し置いたものとの書き入れがあり、この方が真を伝えるとの見解もある。

源内が開催した物産会の記録

物類品隲ぶつるいひんしつ

6巻 平賀国倫(源内)編 大坂 柏原屋清右衛門[ほか] 宝暦13(1763)刊 6冊 <特1-4>

源内が師田村藍水(元雄)と協力して開催した物産会の出品物を分類して紹介した書。竜骨、鼉竜、蛤蚧などにはオランダ語名を付す。第5冊には楠本雪渓(宋紫石)が描く36図を収録。

源内製作の石綿で作った布の解説書

火浣布略説かかんぷりゃくせつ

平賀源内著 大坂 柏原屋清右衛門[ほか3名] 明和2(1765)刊 1冊 <特1-3434>

火浣布(石綿で作った布)の製作に成功した源内が、その紹介をした書。漢籍、オランダ人、蘭書からの知識に基づき、図入りで説明する。森島中良の『紅毛雑話』にも源内の火浣布製作についての記述がある。白井文庫

源内が収集した「紅毛花譜」

Sweerts, E.: Florilegium amplissimum et selectissimum.

Amstelodami: J. Janssonium, 1647-54. 2 pts. in 1 v. <WB32-2(41)>

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スウェールツ『花譜』。560種を掲載した園芸植物のカタログで、手彩色銅版画110枚を収録。初版は1612-15年にフランクフルトで刊行。1620年にはアムステルダムでも刊行され、源内が宝暦11年(1761)入手し「紅毛花譜」と呼んだのは、本書のひとつ前の版にあたる1631年版。

源内が収集した「紅毛介譜」

Rumpf, G. E.: D'Amboinsche rariteitkamer.

Amsterdam: F. Halma, 1705. 1 v. <WB31-21>

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リュンフ『アンボイナ島奇品集成』。アンボイナ島(現インドネシア領)の海産生物を調査し、60枚の銅版画とともに紹介したもの。源内は1705年版を入手、「紅毛介譜」と呼ぶ。

源内が収集した「紅毛虫譜」

Swammerdam, J.: Biblia naturae, sive Historia insectorum.

Leydae: I. Severinum, etc., 1737-38. 2 v. <YP19-327>

  • 源内が収集した「紅毛虫譜」

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スワンメルダム『自然の聖書』。源内が入手し「紅毛虫譜」と呼んだHistoria insectorum generalis(『昆虫学総論』1669年刊)の内容も含む。第2巻末にある顕微鏡による蚊などの観察図は、司馬江漢が模写し『紅毛雑話』に掲載、草双紙などにも流用された。