はじめに
本年(2010年)は、上海で国際博覧会が開かれます。国際博覧会は万国博覧会、縮めて万博とも呼ばれます。世界で初めて開かれた万博は、1851年のロンドン万博です。私たち日本人と万博のかかわりは古く、1862年に同じロンドンで開かれた万博を、ちょうどヨーロッパに派遣されていた幕府使節団の一行が見物しています。この万博では、イギリスの初代駐日公使オールコック(R. Alcock)により、日本の品々が紹介されました。日本は1867年のパリ万博からは出品も行い、出展した美術品・工芸品はジャポニスムの流行に拍車をかけました。
当館ではこれまで、日本人とのかかわりの深い万国博覧会に関する資料を多数集めてきました。この電子展示会では、こうした収集資料を基に、産業や技術面に焦点を当てました。万博は第1回からもう150年以上も経ち、科学や技術は大きく進展しました。そのうち最初の50年間は、蒸気機関と電気の利用が産業を変えた時でした。量子力学以前の、無線や電子技術、航空機や原子力が登場する前の時代です。日本は幕末・維新、文明開化から日露戦争までの時代で、これら西洋の技術を積極的に取り入れておりました。
展示の構成は、「第1部:1900年までに開催された博覧会」で11の万国博覧会と5つの内国勧業博覧会について、各博覧会の特徴を解説しながら、会場の様子を画像で紹介します。「第2部:出展品からみる産業技術の発達」では、万博に出品された各種製品をジャンルに分けて、画像と併せて解説します。また、「第3部:出展品からみる明治日本の産業」では、内国勧業博覧会に出品された主な機械類を画像で紹介しています。
この電子展示会には、現在ではもはや目にすることもできない製品や技術も多く登場します。科学や技術は突然、飛躍して発展するように見えるものですが、そこに至るには、多くの技術者による発明・改良が重ねられています。過去を見つめなおすことで、技術開発の重要性を再認識していただければと思います。