1893年シカゴ万博

電気の活用

【コラム】電気の活用

シカゴ万博では、電力の応用事例や一般的利用例を示す製品が数多く出展され、これらはアメリカが新しい技術の時代に入ったことを象徴した。

会場全体では、1889年第4回パリ万博の16倍もの光源が用いられ、約12万本の電灯(うち15,000個はアーク灯)が設置された。開会式では、クリーブランド大統領がボタンを押すと、電気館の蒸気機関、アリスエンジンが始動して発電機をまわし、会場内に電力を供給するという演出があり、電力で作動する噴水が動き出した。万博のために初めて施設された高架鉄道は、イリノイ・セントラル鉄道を延長したもので、毎時5万人を会場に運んだ。会場内では、運河に電気ボートが走り、循環式の高架電車も運行していた。カジノ埠頭の動く歩道は10台の電車用モーターで動き、数万人を乗せることができた。建物のライトアップなど夜間のイルミネーションも評判となった。

電気館内部では、エディソン(T. A. Edison)が社長を勤めるジェネラル・エレクトリック (General Electric)社の電気の塔(エディソンタワー)や直流型の発電機、ウェスティングハウス(Westinghouse)社交流型の発電機が展示された。両社は1890年前後の約10年にわたり直流と交流の優位性をめぐり泥沼の争いを続けた。しかし、変圧器(トランス)の発明により、交流型は送電時には、ロスが少ない高電圧に変換ができるようになり、電灯と電力の基盤となっていく。

参考文献:

鎌谷親善 「交流システムの形成過程と研究開発-Westinghouse 電気会社を中心に」 (『経済経営論集』 49号 1968.6 <Z3-205>)
能登路雅子 「世界コロンブス記念博覧会-百年後の視点から見たシカゴの夢」 in Rossiter, J. ed.: A history of the World's Columbian Exposition : held in Chicago in 1893. v.1 (Athena Press, 2004) <D7-B5>