令和2年度第2回納本制度審議会オンライン資料の補償に関する小委員会議事要録
- 日時:
- 令和2年9月9日(水)午前10時~午前11時45分
- 場所:
- Web会議システムによるリモート開催
- 出席者:
- 福井健策小委員長、植村八潮委員、遠藤薫委員、奥邨弘司委員、柴野京子委員、永江朗委員、根本彰委員、佐々木隆一専門委員、樋口清一専門委員
田中敏隆一般社団法人日本電子書籍出版社協会常任幹事(図書館対応ワーキングチーム座長) - 会次第:
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- リポジトリの運営に関するヒアリング
- その他
- 配付資料:
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- (資料1)納本制度審議会オンライン資料の補償に関する小委員会所属委員・専門委員名簿
- (資料2)リポジトリの運営に関するヒアリングについて
- (参考資料1)リポジトリの事例
- (参考資料2)オンライン資料収集に係る法規対照表
- 議事概要:
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資料2に基づいて、一般社団法人日本電子書籍出版社協会(以下「電書協」という。)が構築を予定しているリポジトリ(法令の定めるところにより、オンライン資料収集の対象外となる可能性あり。)の運営に関するヒアリングを実施した。主な発言は次のとおりである。
- リポジトリ構想の概要
- 電書協は、出版業界団体自らが責任をもって電子書籍データを保存しオンライン資料収集制度に対応するため、また、多様な出版文化の維持継続するため、令和3年3月から、リポジトリの運用を開始する予定である。
- 収録コンテンツの概要
- 運用開始当初は、「電子文庫パブリ」(電書協が2000年に開始した電子書籍配信サービス)で配信している協会加盟社のコンテンツ10万点以上をミラーサイトで保管する。運用開始後、さらなるコンテンツ増加が見込まれる。
- いずれ非加盟社にも声を掛け、広く参加しやすいリポジトリを目指すが、参加しない出版社によるNDLへのオンライン資料の直接提供や、専門書系の他のリポジトリに参加する出版社が発生するのは必然であり、棲み分けが行われることを前提としている。
- 運営体制
公衆への利用提供について
- 公衆に対する提供は「電子文庫パブリ」により有償で行われる。
- 有償配信の場合も、公衆に利用可能とされているものと考えられる。
コンテンツの保存について(提供元からの修正・削除依頼への対応方針、バージョン管理を含む)- 「電子文庫パブリ」による配信サービスとリポジトリでのアーカイブを一体で行う。配信用ファイルは版元からの要請で最新版に差し替えるが、版違いのファイル、少なくとも初版と最終版は削除せずに保管するのが望ましいと考えている。電子書籍の場合、基本的に絶版という状況にはならない。著作者との契約解除や版元の倒産等何らかの理由で配信停止になったコンテンツも、購読者の再ダウンロードに応える必要性から、削除せずに保管する。電書協やデジタルコミック協議会加盟社の場合は、基本的に、電子出版契約書中に再ダウンロードの許諾に関する条項が含まれている。
- 再ダウンロード許可を出版契約において徹底し、さらに出版契約解除後もリポジトリにコンテンツを残す存続条項とすることで、コンテンツの継続保管が担保されるだろう。ただそれ以上に、配信停止となったコンテンツは公衆が利用可能とは言えずNDLへの提供義務対象となるため、リポジトリからNDLへ移管するか、他の受け皿を探すことを原則とするのがよいだろう。
- 配信停止コンテンツの状況を含め、リポジトリの運営状況については、事業者からNDLへ定期報告を行うような仕組みが考えられる。
- 電子書籍出版契約の内容について、リポジトリへの収録を含め、各出版社の担当編集者が作家に対し正しく説明できるよう、知識を持つ必要がある。業界団体の法務委員会の勉強会等を通じ、各社の法務担当が情報を共有して持ち帰り、各社内で各編集者が作家に説明できるようにする体制が考えられる。
- 従来の納本制度において、版違いは収集対象、刷違いは収集対象外と運用されてきた。電子においても刷違いに相当する軽微な修正は多々あり、全てを提供対象とするのは現実的ではない。一方、版違いは一般的にISBNも異なるものであり、それぞれが提供対象になると認識している。
- 初版と最終版の保管だけでは、途中の版が残らない。世に出たものを文化財として全て収集するという理念と現実的運用を擦り合わせる必要がある。
- 研究対象としては、どの段階でどう記載されていたかの差異が重要である。リポジトリにおいて配信停止コンテンツも保管し、研究者がいつまでもアクセスできる仕組みにするなら、国民からの理解も得られやすいだろう。
- 紙の書籍では、在庫管理コストと市場ニーズを踏まえて絶版とすることがあるが、電子の場合、在庫管理コスト不要という特性から絶版にはならない。別の出版社で取り扱うことになった等の理由で、新規配信を停止することはある。出版社が倒産した場合は、他の出版社が権利を引き継ぐのが一般的。著作権法第31条第3項との関係では、有償配信されるコンテンツは、入手困難には当たらないと考えられる。剽窃、猥褻等の不適切な状況が判明したコンテンツの取扱いは、個別事情を踏まえて判断することになるだろう。
- 単行本と文庫本があり、複数の出版社から文庫本が発行されている場合、どれが電子書籍の底本となるかはケースバイケース。複数の出版社から電子書籍化されることは、あまりない。文庫本の解説部分は本体とは別の著作物であり、文庫本の電子書籍化に際し、解説を含めない場合が多い。
安定性について(運営終了時のコンテンツ取扱方針を含む)- サーバー、アプリ、ビューア等のバックヤードは大日本印刷株式会社と株式会社モバイルブック・ジェーピーが担う。電書協は、講談社、KADOKAWA、集英社、小学館等の大手版元で構成されている。リポジトリの運営に当たっては、日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版インフラセンターとも協力関係にあり、安定した運営が見込まれる。
- 万が一リポジトリの運営を停止する場合には、DRMを解除したうえでNDLや他のリポジトリへコンテンツを移管する仕組みを設ける。
- その他
- メタデータは、出版情報登録センター(JPRO)が運営する出版書誌データベース(Books)を通じてNDLサーチへ連携可能であろう。Booksの書誌情報には、リポジトリへの収録状況の他、音声配信やオンデマンド版の有無等の入手可能性を表示する予定である。
- 一次情報へのアクセスの仲介は、NDLサーチ、さらにはジャパンサーチを通じて、NDLが役割を果たすことができる分野である。
- NDLと電書協との間では上記を踏まえた協定書が交わされる予定である。
(以上)
- リポジトリ構想の概要